「トップの引き際」はいつがベストなのか
経営者の賞味期限・消費期限とは?
トップの引き際が話題になることが多い。
実は、業績が低迷して従業員の士気も下がり、誰が見ても限界だな、という状況になってから退任するのでは遅いのである。そうした場合は、辞める前の最後の期間で起こる「失政の後遺症」に悩まされることが多い。
よって、適切なタイミングでトップにはお引き取りいただく必要があるのだが、では何をもって引き際を判断すればよいか、が問題になる。
以下の図は、リスクマネジメントの観点から、経営トップの持つべきファンダメンタルズとして、体力、気力、知力の3つの項目をまとめたものである。
まず、縦軸を説明したい。賞味期限、消費期限、期限切れとしている。賞味期限と消費期限は、食品に適用される期限で、似ているが違う概念である。
賞味期限とは、食品が最もおいしく食べられる期間を示す。賞味期限が過ぎた食品は、品質の劣化が進む可能性はあるが、食品の安全性に問題があるわけではなく、即、食べられなくなるわけではない。
消費期限とは、食品が安全に食べられる最後の日を示す。消費期限を設定する食品は、腐敗や微生物の増殖が速いため、期限内に消費することが強く推奨される。消費期限が過ぎた食品は、健康上のリスクが高まる可能性があるため、食べるべきではない。
賞味期限内の経営トップはもっとも脂が乗った状態と言える。このときの経営トップは、体力的には壮健であり、元気はつらつの状態を維持している。また、もっとも重要な気力面において、成し遂げるべきなんらかの大義を持っており、使命感に燃えている。
さらに知力においては、個別の事業における戦略や戦術について事業責任者と「ガチンコ」の討論ができ、一方では全体最適の視点をもって、個別最適と全体最適の両方の統合を図ることができる。また、現在のビジネスの思考行動のパラダイムがどのように成立しているかという条件を認識しているだけでなく、次世代では、自分たちの事業がどのような環境に置かれ、ゆえに、どのような位置にシフトすべきかについての明確なビジョンを保有している。
このように体力、気力が充実し、知力における空間的、時間的な視点をしっかりと持っているとき、その経営者は賞味期限内にあるといえる。