「円安?」「国債?」「チャットGPT?」よく耳にするけれど、実際のところ何のことなのか、何が問題なのかわからないまま……そんな今さら聞けないニュースや用語の数々を、どこよりも楽しく、そしてわかりやすくご紹介します!大人気アニメ「秘密結社 鷹の爪」の吉田くんが新聞記者となって、世の中の経済ニュース・時事用語を基本からていねいに紐解き話題となっている書籍『「鷹の爪」の吉田くんが聞く!経済ニュースと時事用語がめちゃくちゃわかる本』の中から一部を抜粋、編集してお伝えします。
本連載は、好奇心旺盛な「鷹の爪」吉田くんの質問を、先輩であるアカツキ記者が答えていく会話形式で構成されています。今回のテーマは「食料安全保障」です。
日本の自給率は38%。先進国の中では最低レベル
吉田くん(以下、吉田):先輩、昨日スーパーで買い物をしたらタマネギが中国産、アスパラがメキシコ産、豚肉がカナダ産で。晩ごはんの野菜炒め、中華料理なのかメキシコ料理なのかカナダ料理なのか考えてるうちに皿から消えちゃったんです。ぼく食べた覚えないんですけど。
アカツキ先輩(以下、アカツキ):たぶん吉田がおいしく食べたんだと思うぞ。しかし吉田、その食材がもし輸入できなくなったらどうなるか、考えたことはあるか?
吉田:昨日の晩ごはんで日本で取れたものは……ごはんとしじみ汁だけかもしれません。
アカツキ:食料のうち、どれぐらいを自分の国で作っているかを「食料自給率」という。日本の自給率は38%で、これは、国民に供給される食料をカロリーに換算したときに、その38%しか国内で作られていないという意味なんだ。国別でみると、カナダやオーストラリア、アメリカなどは100%を超えている。国内で食べる分をまかなって、さらに輸出しているという意味だ。日本は先進国の中では最低レベルだ。
吉田:でもスーパーに並んでるお肉も半分ぐらいは国産って書いてありますし、海でお魚も取れますし、お米や野菜はほとんど国産じゃないですか。そんなに自給率が低いはずがないですよ。
ぼくのふるさとの誇り「しまね和牛」も、島根で自給しているとは言えないんですね。めちゃくちゃショックです
アカツキ:「国産」と「自給」は違う。たとえば牛肉が国産だとしても、その牛に与える飼料が輸入に頼っていたら自給しているとは言えないだろう? 肉などの畜産物は60%以上が国産だが、飼料などを輸入に頼っているから自給率は17%にとどまっているんだ。同じように、コメは自給率99%、野菜は75%と高いが、実は肥料のほとんどを輸入に頼っているので、肥料の輸入がストップしたら生産できなくなってしまう。なので、日本の実質的な食料自給率は10%未満しかないという試算もある。
吉田:ぼくのふるさとの誇り「しまね和牛」も、島根で自給しているとは言えないんですね。めちゃくちゃショックです。じゃあ、もし食料や飼料の輸入が止まったらどうなっちゃうんですか。
アカツキ:恐ろしい研究結果がある。アメリカなどの研究チームが、もしも核戦争が起きたら世界の食料事情がどうなるかを試算したんだ。核爆発で大気中に舞った粉じんが日光を遮り、「核の冬」と呼ばれる気温低下が起きる。その結果、世界中が食料不足に陥り、国際的な食料の取引が止まる。そのとき世界で最も深刻な影響を受けるのが日本で、粉じんが最も少ないケースでも2年後には人口の約6割にあたる7000万人が餓死し、最も粉じんが多いケースだと日本の人口のほぼすべてが餓死すると予測されている。
吉田:めちゃくちゃやばいじゃないですか! ぼく、餓死なんてしたくありませんよ。
アカツキ:政府もやっと重い腰を上げた。農業政策の基本となる「食料・農業・農村基本法」を2024年に改正して、食料危機に備える「食料安全保障」という考え方を新しい柱に据えた。併せて「食糧供給困難事態対策法」という法律も作った。緊急時にはコメや小麦、畜産物、肥料などを増産するよう政府が農家や工場などに要請したり、ほかの作物を作っている農地を足りない作物向けに転換するよう指示したりできる。
吉田:じゃあ僕が最近はまっているアボカドを山のように作ってくれるよう総理大臣に直訴してきます!
アカツキ:絶対にやめてくれ。
※本稿は『「鷹の爪」の吉田くんが聞く!経済ニュースと時事用語がめちゃくちゃわかる本』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。
※吉田くんとアカツキ先輩が活躍中のアニメ連載「そもそも?知りたい吉田くん」は朝日新聞デジタルで読むことができます。