2つめは「内申重視の高校受験を避けたい」という理由。内申書(調査書)は高校受験の合否判定の資料の1つとして使われますが、これに縛られることなく学校生活をのびのびと過ごしてほしいというご家庭が少なくありません。
3つめは消極的な理由ではありますが「人間関係のリセット」。子どもが小学校時代にいじめられた、親自身がPTA活動などで嫌な思いをしたといった理由で、地元の公立中学校を離れて、環境を変えるために受験する親子も一定数はいます。
そして、4つめが「スピード感」。新型コロナウイルスのパンデミックの際にいみじくも明らかになったのが私学の対応の早さでした。国の要請で全国一斉休校になりましたが、私立中高一貫校の対応はすごく良かった。学びを止めないために、迅速にオンライン授業に取り組めていた学校が多かったです。
――そのオンライン授業でも先生方の心配りを感じることが多くありました。鷗友学園女子の先生が「画面越しであっても、必ず一人ひとりの名前を呼んで語りかけている」と話していたのが印象に残っています。後で生徒さんに聞いたのですが「『ひとりじゃない。ここに私の居場所がちゃんとある!』と思えたことが心の支えになった」そうです。
コロナ禍で公立と私立の対応の差が顕在化しました。公立はやはり文科省や教育委員会の方針に従わざるをえませんが、私学は校長の決断ひとつですからね。スピード感でいえば公立に圧勝していました。
結局、親たちは、わが子が巣立っていくこれからの時代は自分らが経験してきたことが通じない社会になるとわかっています。しかし、同時に「わが子をどう育てればいいのか」という不安感を持っているんです。今の中高一貫校人気は、親の不安を解消してくれそうだという期待感の裏返しとも言えます。
もちろん、私学でも学校差は大きいですし、実際には入ってみないと分からないことのほうが多いでしょうが、それでも「次の時代はこうなりますよ。だから、我々はこうします」と話す学校に惹かれていくのは無理からぬことだと思います。
――反対に人気が低迷していく学校はどういう学校だとお考えですか。
私は「村のような学校」という言い方をするんですけど、毎年決まり切ったスケジュールをただこなすだけで変化のない学校があります。変化の激しい時代においては、“現状維持=後退”ですからそういう学校は取り残されます。
昔みたいに伝統がある・環境が素晴らしいというだけでは選ばれません。それらは、子の将来に対する親の不安を解決してくれるわけではありませんから。
正直な話、私立中高一貫校といっても玉石混交ということもありますから、単に流行りに乗っているだけなのか、実態がちゃんとあって機能しているプログラムなのかを見極めないといけません。
――中高一貫校も、変わっていく点と変わらない点がありますよね。次回は「変わらない点」として、普遍的な人間力を育てる宗教校の魅力についてお話いただきます。