そりゃキレるわ…北海道猟友会が異例の「ヒグマ駆除要請拒否」検討、行政の迷走するクマ対策に喝!Photo:PIXTA

なぜクマ被害が増えているのか
ハンターへの誹謗中傷も原因?

 クマの駆除が難しくなっている理由は法律的な問題だけではありません。そもそもクマを駆除するハンターの数が減っているのです。

 日本の狩猟免許の所持者は減少傾向にあります。1970年代には50万人以上いましたが、現在は20万人ほど。その6割近くが60歳以上と高齢化が進んでいます。新しく狩猟免許を取る若い人も一定数いるのですが、あくまで趣味の一環にとどまり、正しくクマを撃つほどのレベルまで熟達していくハンターは少ないとされています。

 さらに、クマを駆除すると自治体やハンターに対してクレームが多く寄せられるという声もあります。例えば、北海道のヒグマ対策室に対して、「多い日には日に10本ぐらいの電話があり、1本1本の電話が長いので仕事にも大きく差し障った」「捕獲したハンター個人まで特定して、非難するような電話がたくさんあった」と報道されています(TBS NEWS より)。

 また、北海道で放牧中の牛を66頭も襲って「忍者熊」「怪物」と恐れられた「OSO18」を駆除したハンターは、名前を公表していません。その理由は、「駆除したことに対しての誹謗中傷を恐れてのこと」と報じられています。

 一方で、クマは放っておけば自然に増えていきます。メスのヒグマは、2~3年おきに1~4頭を出産するそうです。同様に、ツキノワグマは、数年おきに1~2頭を出産します。結果として、ヒグマもツキノワグマも年間20%程度の自然増をすると、さまざまな研究結果から明らかになっています。

 ヒグマの北海道内の推定生息数(2020年)は1万1700頭で、30年前の5200頭から倍以上に増えています。理由は、ヒグマの絶滅を防ぐため一部の猟が禁止されたことでした。しかし、23年の人身被害拡大を受けて、「北海道ヒグマ保護管理検討会」が、人里周辺でのヒグマの総数を減らす「個体数管理」にシフトすることを決めました。

 他方で、本州のツキノワグマの対策では、北海道のヒグマほど明確に個体数管理を打ち出していない県が多く見られます。一例として、中部地方のある県では「原則としてツキノワグマの捕獲(狩猟を含む)は行わない」としています。そして、「人間とツキノワグマの棲み分け(ゾーニング)を行い、各ゾーニングのエリアにおいて個体数管理・生息環境管理・被害防除対策を複合的に取り組む」としています。