博士号を持つ賢い人でも95%は負けた
共通する行動パターンとは

 私に言わせれば、株は楽しい。それは間違いありません。でも決して、ラクなものではありません。私は68年間株式投資をして、毎日記録をつけ、反省しているわけですが、それでも読み間違えます。トータルとして勝っているだけで、思ったとおりにいかないなんてことはザラです。

 このことに関連する「ラルフ・ビンスの実験」いうものがあります。プログラマーのラルフ・ビンスは、博士号を持つ40人にゲームをしてもらいました。そのゲームのルールは次のとおりです。

1) 抽選箱のなかに当たりが6本、ハズレが4本入っている
2) 当たりが出れば賭け金は2倍、ハズレが出たら賭け金は没収
3) 元手1000ドルで1回に賭ける金額は自由
4) ゲームを100回繰り返す

 6本当たりが入っているわけですから、プレイヤー側に有利な賭けといえます。毎回100ドルかけたとすると、勝ち60回でプラス6000ドル、負け4000ドルとなり、理論上は手持ち資産が3000ドルになるはずです。

 結果、どうなったと思いますか? 40人の参加者のうち、資産を増やしたのは2人しかいませんでした。博士号を持っている「賢い」人間でも、95%は負けてしまったわけです。

 負けた95%は、「負けたあとに賭け金を増やし、勝ったあとには減らす」という賭け方をしていました。人間は負けが続くと、「次は勝てるはずだ」と思い、勝ちが続くと「次は負ける確率が高い」と考えてしまうんですね。

1回1回の勝負は独立したもの
切り替えができない人が負ける

 負けが続いたら、なんとかとり返そうとつい思ってしまいます。

 でも本来、1回1回の勝負は独立したもの。分けて考えなければいけないのに、切り替えができていない。そういう人が負けるのは必然ですが、そういう人が大半なのでしょう。

 人間は弱いんですよ。それを覆すのには、よほどの鍛錬が必要です。

 厳しいことを言ってしまいましたが、事実を直視せずに利益を得ることはできません。覚悟を持って株の世界に入ってきて、勉強を怠らない人であれば、「絶対」とは言えませんが勝てる確率はグンと高くなります。

 たとえば、あなたが仕事で評価されて出世したとして、「運が良かったね」と言われたら、どう思うでしょうか。決して、いい気はしないはずです。

 運の要素がゼロではないにしても、「自分はそれだけ努力したんだ」と思うんじゃないでしょうか。よく株で儲けた人を「運が良かった」、負けた人を「運が悪かった」と言いますが、運なんかじゃありませんよ。

 運よりも勉強がものをいう世界です。