「何でも話して」と言ったところで話せるわけがない

――ではもう1つの、言いたいことがあるけど気まずくて言えないというタイプはどう対応すれば良いのでしょう?

木暮:このタイプはおそらく、「俺は悪くないんだけど」というような思いを言語化できずにいると思うんです。「おかしいのは会社の方針だ」、もしくは「あなたがおかしいんだけど……」などと思っている。でもこれが上手く言えない、という状態だと思うんですよね。

これを言語化して引き出してあげなければいけないわけですが、その際の大前提として、高圧的な態度を取らないこと。当然、誰も何も言えなくなりますから。

だからといって「何でも話して」とか「無礼講だから」と言うのも全く意味がないですよね。無礼講が無礼講だったためしがないですから(笑)。「何でも話して」と言ったところで、みんな何でも話せないから困っているわけです。

――たしかに(笑)。ではどのような言い方をすれば良いのでしょう?

木暮:ここでリーダーは何をやらなければならないかというと、「教えてほしい」というスタンスを取ることなんです。「何でも話して」ではなくて、「私が知りたいから教えてほしい」、そういうスタンスで聞かなくてはいけないんですよ。

――それは言い換えると、“下手に出る”ということですか?

木暮:そういう話にも多少関わってくるかもしれません。「あなたが思っていることを言ってみなさい」という言い方だと、部下はなかなか本音を言えないですよね。下から上に対して物申す、みたいな感じになって。

だからそういう言い方ではなくて、「私はこういう目的であなたが感じていることを知りたい。考えがまとまっていないかもしれないけど教えてほしい」と聞く

さらに「こちらの聞き方も正しくないかもしれないし、私はあなたの気持ちが完全には分からないから、聞き方が変になってしまうかもしれない。でもちょっと教えてほしいんだ」という感じで聞いていくと、高圧的にならずに、相手が話しやすい環境を作れるかなと思うんです。

「あなたのためだから」は超NGワード

木暮:そのうえで大事なのが、選択肢を出すことです。普通の会話でもそうですけど、オープンクエスチョンというのはなかなか答え辛いものがありますよね。「最近どう?」と聞かれても、大抵の人は「いや、どうもこうもないですよ」となる。

だから、特に相手が答えにくいようなことの場合は、「これとこれだとどっちに近い?」とか、「これみたいな感じ? それとも全然違う感じ?」などと選択肢を出してあげるといい。そうすると、相手はとりあえず近い気持ちを言えたりしますから。

何も話したくない、みたいな末期状態の場合は無理だと思いますけど、そうなってしまう前に、「ちょっとチームのために教えてほしいんだ」と聞いてみてください。

――反対に、こういう聞き方は絶対にしてはいけない、というものはありますか?

木暮:「あなたのだめだから」というのは禁句です。だって絶対に違うじゃないですか、自分のためでしょう(笑)。だからそこはもう素直に、「私のために教えてくれないか」と言ったほうがいい。「これを言うのはあなたのためだから」と言ったら、もう胡散臭くてしょうがない。

――その時点で話す気を失いますよね。

木暮:そうではなくて、私が本当に知りたいから、私のためだと思って教えてくれないか、と言いましょう。そして、「どっちに近い感じ?」などと選択肢を出す。部下に言語化させるというのは、部下に話しやすくさせる前提を作る、ということかもしれないですね。

――それもある意味、リーダーに求められる言語化スキルと言えますね。

木暮:基本的にリーダーのほうがキャリアが長い分、言語化スキルもリーダーの方が高いことが多いです。その言語化できている人が、「お前はこうでこうで、こうなっている」と分析してしまうと、言語化スキルの低い相手はもう何も言えなくなりますよね。だからこそ、上手に引き出すこともやらなければいけないと思います。