例えば営業会議では、営業部長が会議を仕切り、各担当者が各見込みの状態を説明する。営業プロセスの確認を中心に行う会議であり、営業部門のみで行われることが多い。サービス部門や、顧客にとって重要な接点となっているホームページ・コールセンターを管轄する部門は、この議論に参加しない。
顧客にとって、企業との接点は多様化しているのに、なぜか営業プロセスは営業部門だけで議論されるのである。
その結果、せっかく顧客と接点を持っている部門が多くあっても、そこから意見を吸い上げ、「顧客がどのようなことを考えているのか」について横断的に議論することができない。
営業担当者は市場、顧客と自社との接点なのだから、組織全体との連携を強くすべきだ。そのほうが企業として、市場や顧客との接点を広く持つことができる。
同様に、営業部門以外でも顧客との接点を持つ部門はいくつもあり、それらの部門の知見も営業部門や社内全体で共有されるべきだろう。営業担当者が「売る」ということに焦点を当てた営業プロセス管理は、組織全体での接点の広がりを阻害することが多い。
社員がやる気をなくす「自己矛盾」
働きがいで大切なのは「自己実現」
4:営業担当者のやりがいが起きにくい
組織にとって最も大事なことは、個々の社員のやる気である。社員にとって、「どれほどやりがいのある仕事か」が、重要だ。私は個人的に、営業プロセスは働き甲斐をなくすと考えている。速く、沢山、短い時間でパイプラインを乗り切る。こうしたことを目的化すると、営業担当者の行動が顧客の喜びと逆行してしまうことすらある。
「今月、売上が足りない、なんとかして売らなければならない」となると、顧客がどんなことを実現したいかよりも、「とにかく今月買ってほしい」になってしまう。顧客のことを考える営業担当者ほど、ここで葛藤する。自分の中での葛藤が大きくなり、その結果、自己矛盾が発生する。
「こうありたい」と思う、自分が描いていた理想と自分がしていることが矛盾するのだ。マズローの欲求5段階説という有名な理論があるが、その最上位は「自己実現」だ。