2020年に「Make you happy」でプレデビューしたガールズグループのNiziU(ニジュー)がよい例である。Nizi Projectと呼ばれるオーディション企画からデビューした彼女たちは、予選や合宿模様などデビューするまでの道のりが一種のドキュメンタリーとしてHuluを中心に配信された。

 夢をつかむために奮起する彼女たちの物語は、一種のコンテンツとして消費されていたといえよう。このように、昨今のアイドル市場では成長していく過程までも1つのコンテンツとしてファンに提供されることが多くなった。また、恋愛リアリティ番組の「テラスハウス」や「バチェラー・ジャパン」「オオカミくんには騙されない」などもこれに含まれると考えられる。

(3)コンテクスト型

 我々は、特定の人物に起こったできごとを過去に起きたできごとと関連づけて連続性のある物語として消費しようとする傾向がある。特にテレビ番組では、過去のVTRを用いて、そのイベントが過去のできごととつながりがあったり、バックグラウンドがあることを視聴者に再認知させ、現在のできごとをよりドラマチックに演出しようとする。

 たとえば1998年サッカーワールドカップで当時日本代表監督だった岡田武史は、メンバーから三浦知良選手を外した。彼にとっては人生の1つのできごとかもしれないが、2007年に日本代表監督に再任して以降、メディアは三浦を外したことに後悔がなかったか岡田に度々質問した。サッカーファンも三浦の日本代表選出や、スタッフとして同行することを待望するなど、三浦が今度こそ2010年のワールドカップ代表にかかわれることを期待した。

 本来なら1998年のワールドカップと2010年のワールドカップはそれぞれ独立した文脈で消費されるはずなのだが、岡田が監督をすることで、人々は三浦の存在を見出そうとして「三浦知良を落選させた物語」の延長として岡田の監督就任を消費しようとしたのである。