良好な関係を築き、逆境に強くなる
「社会情動的スキル」に効果的
ここ数十年間、学校生活の指示に従えない、授業に集中できない、上手にコミュニケーションが取れないなど、小学校に上がってくる子どもたちが自分たちの行動や感情調整ができないことが問題視されています(6)。
幼稚園が終わるまでに、約35%の子どもたちに、こういった自己調整力の遅れが見られると言われています(7)。
自己調整力欠如は、子どもたちの学習だけでなく、仲間との関係性にも影響を与えるため、学校生活の質全体にも関わってきます。
こういった背景を受けて、教育に本当に必要なものとして、学力だけではなく、行動や感情調整の役をつかさどる社会情動的スキル(Social-emotional skills)の重要さが注目されてきました。
社会情動的スキルとは、自己認識や自己制御、責任ある決断力、周囲への気づきを含む社会的認識力や対人スキルのことを指し、良好な人間関係を築いたり、逆境を乗り越えたりするためには不可欠です。
つまり、テストに備えるためではなく、子どもたちが人生を航海して行くために必要なスキル、「生きる力」と言えます。
実際に、この社会情動的スキルをターゲットにした学校でのプログラム(5~18歳対象)の効果を総合的に見てみると、平均で学力は11%、社会情動的スキルは25%向上、また教室内での非行、不安や鬱の傾向が10%も低下しています(8)。
この社会情動的スキルの発達に効果的だとされるのが、マインドフルネスです。
マインドフルネスの実践を通して意識的かつ持続的に自分の注意を調整することで、思考や感情、さらには行動への気づきを高めるとされ(9)、この20年間社会情動的スキルへの注目とともに欧米諸国では学校教育に盛んに取り入れられるようになりました(10)。
(6) Rimm-Kaufman, S. E., Pianta, R. C., & Cox, M. J. (2000). Teachers’ judgments of problems in the transition to kindergarten. Early childhood research quarterly, 15(2), 147-166.
(7) Montroy, J. J., Bowles, R. P., Skibbe, L. E., McClelland, M. M., & Morri-son, F. J.(2016). The development of self-regulation across early child-hood.Developmental psychology, 52(11), 1744.
(8) Durlak, J. A., Weissberg, R. P., Dymnicki, A. B., Taylor, R. D., & Schel-linger, K. B.(2011). The impact of enhancing students’ social and emotional learning: A meta‐analysis of school‐based universal interventions. Child development, 82(1),405-432.
(9) Jennings, P.A., Snowberg, K.E., Coccia, M.E., & Greenberg, M.T. (2011). Improving classroom learning environments by cultivating aware-ness and resilience in
education (CARE): results of two pilot studies. Journal of Classroom Inter-action,46 (1):37-48.
(10) Roeser, R. W., Greenberg, M. T., Frazier, T., Galla, B. M., Semenov, A. D., & Warren,M. T. (2023). Beyond all splits: Envisioning the next gen-eration of science on mindfulness and compassion in schools for students. Mindfulness, 14(2), 239-254.