部屋でヨガをする親子写真はイメージです Photo:PIXTA

ままならない育児にストレスを抱える親は多いが、その状態だと親子ともに良くない状況に陥ってしまう。そこで効果的なのが「マインドフルな子育て」だという。自分の心身への気づきを高め、子どものあるがままを受け入れる――「マインドフルな子育て」の5つのポイントを提示する。本稿は、島村華子『親子でできるモンテッソーリ教育とマインドフルネス』(創元社)の一部を抜粋・編集したものです。

特定の思考パターンを持てば楽だが
周りで起こることに気づかない可能性も

 マインドフルネスの起源は仏教哲学ですが、臨床心理学の世界では、宗教的志向から離れ、より親しみやすいフォームに変化してきました。

 マインドフルネスとは、「現在起こっていることに注意を払い、それに気づいている状態(1)」のことを指します。

 よくある誤解ですが、マインドフルネスは心や感情を空っぽにするのではなく、興味を持って自分の今の心や体の状態への気づきを高めるということです。

 マインドフルネスの状態は、今この瞬間に起こっていることを客観視し、批判的な目を持たないことで、否定的な感情や衝動に対する耐性が高まると言われています(2)。

 また、マインドフルネスによってオープンな気づきが培われることで、私たちは自分自身の奥に潜んでいるニーズに耳を傾けることができます(3)。自分のニーズを満たしてあげるために、どうしたら良いのか。自分の内なる世界により注意を向けることで、最終的には自分の意識や行動をコントロールすることにもつながり、自己調整能力の発達にも役立つとされています(4)。

 これに比べて、マインドフルネスの反対の状態のことをマインドレスネスと言い、無意識の行動や思考のパターンによって、「今」の瞬間に起こっている考えや感情に意識がいかないことを指します。

 例えば、無意識の行動は、車の運転や意識しなくても通勤時に同じ電車のホームに行きつくなど。また、私たちの思考もパターン化しやすく、だれかに対しても「この人はこういう人だ」という思い込みにつながります。

 このように考えなくしても行動できてしまったり、特定の思考パターンを持ったりすると、楽ではありますが、周りに起こっていることや目の前の人の変化に気づいていない可能性があるのです。

 過去や未来にとらわれて心配をしすぎることも、目の前の出来事に集中できない原因となり得ます(5)。

(1)(5) Brown, K.W., & Ryan, R.M. (2003). The benefits of being present: mindfulness and its role in psychological well-being. Journal of Personality and Social Psychology, 84 (4):822-848.

(2) Taylor, D. G., & Mireault, G. C. (2008). MINDFULNESS AND SELFREGU-LATION: A COMPARISON OF LONG-TERM TO SHORT-TERM MEDITATORS. Journal of Transpersonal Psychology, 40(1).

(3)(4) Deci, E.L., & Ryan, R.M. (2008). Self-determination theory: a ma-crotheory of human motivation, development, and health. Canadian Psychology, 49 (3):182-185.