【2位】
「結局は好きなように生きたやつが勝ちなんだよ」
――松永高司(村上淳さん)(ドラマ『極悪女王』1話より)

今年の1番の名言は、朝ドラの「寅ちゃん」!名言グランプリでふりかえる2024年

女子プロレスラー・ダンプ松本さんの半生を描いたドラマ『極悪女王』(Netflix製作)の一節です。

父親の不倫、DV、金銭問題を抱えた貧しい家庭で育った主人公・松本香(ダンプ松本)が、幼少期から憧れていた女子プロレスのオーディションを諦めかけたとき、全日女子プロレス社長・松永高司が香に放ったのがこの言葉でした。

「結局は好きなように生きたやつが勝ちなんだよ」

審査では、次のようなコメントが上がりました。

佐々木圭一さん(『伝え方が9割』著者)
「この数年、劇的に世の中が動いてると思うんですよね。これは昭和の話ではありますが、令和の今年であったとしても、ものすごい響く名言だなと。好きなように生きるって楽しい反面、楽しいだけじゃなくて辛いこともあるし、批判もされたりもすると思います。だからこそ、『自分は好きに生きるんだ』と突き通せるのは、すごい。
また、世の中がどんどん動いているがゆえに、当初の夢を諦めることも結構あると思うんです。『人生どうしようかな』という悩みが起こりやすい時代ですよね。夢を諦めそうになっている人たちや、これからどうしようと思っている人たちにとって、この言葉は、背中をとても押してくれる、素敵な名言だなと思います」

田原総一朗さん(ジャーナリスト)
「僕はまさに、この言葉を生きてるんです。高校生になって次第に勉強が難しくなって、『なんで勉強しなきゃいけないの?』と高校の先生に聞いたら、『当たり前だろう。大学に行くんだから』と。さらに『なんで大学に行かなきゃいけないの?』と先生に聞いたら、『当たり前だろう。大学に行かないと良いところに就職できない』と。そこで『就職しないといけないんですか?』と先生に聞いたら『当たり前だ』と。
でも何人目かの先生の回答は面白かった。国語の先生だったんだけど『1回しかない人生を、生きるんだ。1回しかない人生を生きるのに、一体、何がしたいのか。これを考えるのが教育だ』と。やはり教育の話になりますが、1回しかない人生を、何がしたいのかを考える教育に変えていく必要があると感じさせられる言葉ですね」

そして第3位には、一般のX投稿者の言葉が選ばれました。

【3位】
「(左利きの人にとって)
世の中の人はみんな右利きだから
手がつなぎやすい」

――デスペラード。さん(X投稿者@10perapera20)の甥っ子さん

今年の1番の名言は、朝ドラの「寅ちゃん」!名言グランプリでふりかえる2024年

「左利きの苦悩」をテーマにした、小学3年生のある夏の自由研究に記された言葉です。

ハサミが使いづらかったり、自販機に小銭が入れづらかったり、改札が通りにくかったりと、左利きには悩ましい点が多数あることに触れつつも、最後は「でも世の中の人はみんな右利きだから手がつなぎやすい」と締められた、この文章。

この言葉がSNSに投稿されるや、13万以上もの反響を呼び、「こどもならではの素敵な考え方」と称賛が相次ぎました。

審査員のコメントです。

田中里奈さん(プロデューサー/モデル)
「私はこれを読んだ瞬間に、『これが1番いいな』と思いました。いま『多様性って大事だよね』と言われているけれど、どういうふうに共生していけばいいのか、世の中が試行錯誤しているときだと思います。どう手を繋いだらいいか、尊重し合ったらいいかわからない人が多いなかで、それぞれの個性をやさしく繋ぐような、共存のヒントになるあったかい言葉だなと思います」

坪田信貴さん(坪田塾 塾長)
「最初、『えっ』と思ったんです。というのも、もし2人が向かい合っていたら、右手と左手って、手をつなぎにくいじゃないですか。だけど多分、この子が思っているのは、同じ方向を向いて横に並んでるときじゃないですか。その関係性も含めて、素敵だなと思いました。人間というのは、相対していると心理的に敵対関係が生まれますけど、会議とかでも、隣に座ってたら同じ意見になりやすい、みたいなことが言われています。僕は、その子どもの目線で、同じ方向を向いている人と、ふと手を繋いだときに繋ぎやすいという映像が浮かんで、言葉がビジュアル化するって、こういうことだなということを考えました」

山口真由さん(信州大学社会基盤研究所特任教授)
「正直申し上げて、私たちの多くが”多様性”という概念に疲弊しています。上から『正しさ』を押し付けられても、心は乗れないものです。そんなとき、右利きの人が多い世の中で少数者である左手の人の苦悩と誇らしさを大げさでなく表現した言葉は、違うものが合わさることこそ価値だと自然に頷かせてくれました」

さて、以上が、グランプリから第3位のコトバでした。
つづいて、第4位から第10位に選ばれたコトバを一気にご紹介します。

【4位】
「とにかく丁寧に『80%』を続けています」
――岡田紗佳さん(プロ雀士・モデル)

今年の1番の名言は、朝ドラの「寅ちゃん」!名言グランプリでふりかえる2024年

プロ雀士の岡田さん。麻雀のプロリーグ「Mリーグ」の1年目の試合で、岡田さんが大きなミスをした際に、先輩選手から「カメラの前では絶対に下を向くな。見られている意識を持て。機械でもミスするんだから人間のミスは当たり前」とのアドバイスを受けたそう。

岡田さんはそのことを振り返り、「試合に臨む前に、80%の力を出せればいいと思うようになりました。人間なのでちょっとしたミスは絶対起きる。だからS級ミスだけはしないように。とにかく丁寧に『80%』を続けています」と語っています。

「24時間、いつも全力で頑張る」という、ある種“昭和的な”考え方とは対をなすような、非常に現代的な印象のある言葉です。

審査員は次のコメントを寄せています。

土江英明さん(ダイヤモンド社編集者)
「丁寧にやったほうが、結局スピードって早くなると日頃から感じていました。急いで物事にあたるよりは、一つ一つ丁寧にやったほうが結果的に早くなる。岡田紗佳さんは2024年を代表する一人だと思いますが、そんな岡田さんの麻雀への向き合い方をみていると、80%と言いながら、100%でやられているような印象を感じます」

山口真由さん(信州大学社会基盤研究所特任教授)
「現実世界では100%のパフォーマンスを継続することはほぼ不可能です。私たちは常に複数のタスクを抱え、限られた時間を家族に趣味に仕事に配分している。疲れている。体調は常に万全とは限らない。そんな現実を前提に、80%を継続することこそがプロフェッショナルだという発想の転換に打たれました」