3Dプリンターを用いた
駅舎建設の取り組み
今回、最も大きなブースを構えていたのがドローンの展示・体験だ。鉄道事業者のドローン活用はもはや珍しくないが、JR西日本はドローン、デジタル技術でインフラ管理を支援する「株式会社ジャパン・インフラ・ウェイマーク」と協力し、さまざまな施設、シチュエーションに応じたドローンの導入と、撮影・データの活用を進めている。
今年度は駅舎などの建築設備検査、樹木による送電線支障の発見、変電所監視へのドローン導入に向けた実証実験を実施。このほかにも新幹線高架下のクラック(ひび割れ)検査や、ボート型ドローンを活用した河床洗堀(川底の土砂が流され、橋梁が傾く現象)調査への応用を検討している。
こうした検査、調査業務は複数人のチームが長距離・長時間移動して行うため、省力化の余地が大きい。技術部門の人材確保が困難になる中、同社の熱の入れようがうかがえる。
そしてもうひとつ人手不足に関連し、スペースを割いて展示した新たな取り組みが3Dプリンターを用いた駅舎の建設だ。今や家庭用3Dプリンターを10万円以下で購入できるが、そんな時代が訪れるはるか昔、10年ほど前のことだったか、3Dプリンターの建築分野への応用を伝えるニュースを見た記憶がある。
3Dプリンターは樹脂や金属を1層1層積み上げて三次元の物体を造形していくが、同様にコンクリートを積み上げて造形したパーツを組み立てることで住宅が完成する。また巨大3Dプリンターを現場に設置し、その場で住宅を組み上げることもできる。
面白い技術だと思いながら、はたしてこれが実用される時代が来るのかと思った記憶があるが、この10年で技術は着実に進歩したようだ。この取り組みでJR西日本とタッグを組むのは、先進3Dプリンター住宅の開発と販売を手掛けるベンチャー企業「セレンディクス株式会社」だ。
同社は2018年8月、「世界最先端の家で人類を豊かにする」ビジョンのもと、「車を買う値段で家を買い替えられる」「30年の住宅ローンをゼロにする」ことを目標に設立された。3Dプリンターを用いた10平米の「Seremdix 10」は330万円(税別)、50平米の「Seremdix 50」は550万円(同)で販売しており、能登半島地震の被災地に災害復興住宅として建築された実績がある。今後はウクライナへの供与も検討していくそうだ。