JR西日本は9月15日の記者会見で、ソフトバンクと共同で進めてきた「自動運転・隊列走行BRT」開発プロジェクトが専用テストコースでの実験を完了し、公道での実証実験を開始すると発表した。会見後に行われたテストコースの報道公開で、筆者は実際の車両に試乗する機会を得た。果たして技術的にどの程度、成熟したのか。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
専用テストコースで
1万4000キロの走行試験
BRTプロジェクトの詳細は、2021年11月8日付「JR西日本とソフトバンクが『自動運転バス』実証実験に乗り出す狙いとは」で取り上げたため本稿では省く。
要約すれば、これは同社がコロナ前から研究を続けてきた「人口減少時代にも持続可能な、地域ニーズに適した鉄道・交通システム」の一つの解であり、自動運転と前のバスに自動で追走する隊列走行を組み合わせた新たな輸送システムである。
自動運転・隊列走行のメリットは、需要に応じて1台、2台、3台と増解結が可能で、しかも2台目以降は無人運転のため運転手の増員の必要がなく、人口減少社会における担い手不足にも対応できることだ。また支線から小型バスが合流して隊列に加わり、ターミナルまで直通するような、レールに縛られる鉄道では実現できない柔軟な運用も可能となる。
プロジェクトはコロナ禍中の2020年3月に始動。2021年11月から東海道本線野洲駅近くの専用テストコースで累計1万4000キロに及ぶ試験走行を重ねてきた。
JR西日本が技術の熟成を進める中、国土交通省も2022年3月に「基幹的なバスにおける自動運転導入に関する検討」の中間とりまとめを発表。同年9月に「地域公共交通(BRT)等の導入に関するガイドライン」を策定するなど、社会的な機運が高まってきたこともあり、いよいよ公道での実証実験という次のステップに進むことになった。