企業の言語化・コンテンツ化をサポートする竹村俊助氏のもとには、多くの経営者が自社の発信について相談に訪れる。そして多くの場合、彼らは「バズる必要はない」「一部の人だけにメッセージが届けばいい」といった発言をする。しかし、誰にも知られていないままでは選ばれる会社にはなれない、と竹村氏は指摘する。選ばれる企業になるために必須の「人々の心を動かすコンテンツの作り方」をレクチャーする。※本稿は、竹村俊助氏『社長の言葉はなぜ届かないのか?経営者のための情報発信入門』(総合法令出版)の一部を抜粋・編集したものです。
企業が発信すべきは「情報」
ではなく「コンテンツ」
企業が発信すべきなのは「情報」ではありません。「コンテンツ」です。なぜコンテンツを発信する必要があるのか?
今は情報過多な時代です。これまでは情報自体が希少で価値があったため、情報を流すだけでも見てもらうことができました。しかし今は、誰もが発信できるようになり、世界には玉石混交の情報が溢れるようになりました。ただの情報では見向きもされませんし、もし見聞きしてもスルーされることがほとんどです。だから、コンテンツにする必要があるのです。
では、コンテンツとはそもそも何なのでしょうか?
ここ数年でコンテンツという言葉をひんぱんに耳にするようになりましたが、きちんと説明できる人は多くありません。辞書で調べてみると、意味のひとつに「インターネットなどの情報サービスにおいて、提供される文書・音声・映像などの個々の情報。デジタルコンテンツ」とあります。これも、わかるようでよくわかりません。
僕なりにコンテンツを定義するなら「何かしら心が動くもの」です。映画、音楽、マンガ、小説……これらは言うまでもなく、喜怒哀楽などの「感情が動くもの」なので「コンテンツ」です。例を出してみましょう。
次の内容は「情報」です。
株式会社インターネットという会社を設立した。事業内容は通信インフラの整備だ。
次の内容は「コンテンツ」です。
私は東日本大震災を岩手県で経験しました。地震発生後はしばらくインターネットが使えなくなり、普段オンラインで人とつながれたり情報が得られたりすることのありがたみを感じたのです。それがきっかけで、通信インフラを整備する会社「株式会社インターネット」を立ち上げました。
世界のあらゆる物事が
コンテンツになる
両者を読み比べて、コンテンツのほうは「ああ、そういう思いでやってるんだな」と心が動いたはずです。とにかく何かしら心が動けばコンテンツになりうるのです。
ちなみにコンテンツにするためには、エモいエピソードや表現は必須なのでしょうか?僕は数字が並んでいるただのデータであっても「そうなのか!」と心が動くならコンテンツと呼んでいいのではないかと考えています。
2024年の初めに「スノーピークの2023年12月期連結決算は、純利益が前期比の99.9%減の100万円だった」というニュースが出ました。これはただのデータかもしれませんが、驚いたり、思うところがあったりする人は多かったはずです。