今春スタートする独立行政法人改革。公開でムダを洗い出す「事業仕分け」による抜本的な見直しを控え、厚生労働省では“抵抗勢力”の動きも活発化している。
舞台は、薬害肝炎問題を検証する第三者委員会だ。同委員会は、医薬品の製造・販売を承認する、厚労省管轄の独法「医薬品医療機器総合機構」(PMDA)と厚労省医薬食品局のあり方を問題視。実態を調査するため、医薬食品局を含めた全関係者にアンケートを実施し、5割以上に相当する約430人分の有効回答を得た。だが、結果の公開をめぐって委員会が紛糾している。
公開阻止に動いたのは、厚労省関係者を主体とする反対派である。回答結果が事業仕分けの議論に影響し、PMDA改革、すなわち厚労省の権益阻害につながることを懸念した模様だ。
それだけPMDAにおける厚労省の権限は大きい。PMDAの全職員515人(2009年4月)のうち、約120人が厚労省などからの出向者で、彼らが部課長以上の管理職をほぼ独占している。PMDAが設立5年と比較的新しいためでもあるが、中途採用組を含めたプロパー職員は事実上出世の道が閉ざされているのが現状だ。
本誌が一部入手したアンケート結果には、こうした“お役所支配的”組織の下、「医薬品の承認審査が科学的に判断されない」「審査期間や結論が厚労省職員の意欲や恣意性に左右される」といった現状が赤裸々に記されている。
作業の非効率さやモラル低下が明るみに出れば、PMDAの組織・風土が問題視され、短期的措置として人員の適正配置や外部人材の登用が進められる可能性は高い。となれば、厚労省が握る許認可権限を“ヨソ者”に侵害され、医療・医薬業界への支配力が低下することを、公開反対派は恐れている。
しかし本来懸念すべきは、閉鎖的組織が引き起こす審査ミスや国際競争力の低下である。職員430人の生の声は、改革にどう作用するだろうか。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 柴田むつみ)