しかし、長期的に見れば、それは自己成長の機会を放棄することを意味しないだろうか。挑戦を避けることで、自分のスキルを高める機会を逃し、結果としてプロフェッショナルとしての評価を下げていることにならないだろうか。

経営者が絶対に信頼しない人物とは?

 まじめな人ほど安全策を持つ傾向にあるようだが、私が社内会議などでずっと感じていたのは、そんなにまじめな性格だというなら、なぜ上司から信頼をなくすような「安全な言葉」を吐く前に、準備をしてこないのだろうかということだ。

 なんでもかんでも「できます」とほざくのも信頼をなくすのだが、それ以上に、なんでもかんでも「できるかどうか、やってみないとわかりかねます」的な言葉を吐く人物に、経営者が信頼を寄せることはない。

 はじめから成功が約束された事業やプロジェクトなどあまりなく、全体の30%は不透明な部分が残っているのは当たり前だ。であれば、言い方として70%の部分は「できます」と強く断言できるはずだ。

 それが会議で断言できないのは、徹底的に考え抜いていないか、それとも心理的な部分が作用しているかのどちらかであろう。

 まずはきちんと下調べなどの準備をし、できるとわかっているものについては「できる」とはっきり言い切ることが大切だ。仕事への前向きな姿勢とはこういうことをいうのではないだろうか。

 逃げの精神が蔓延すると、組織全体の士気にも悪影響を及ぼす。挑戦を恐れない文化を育むことで、組織全体が前向きに成長し、より高い成果を達成することができる。特に若い世代のビジネスパーソンには、失敗を恐れずに挑戦する姿勢を持つことが求められる。

稲盛和夫がカチンときた部長の言葉

 京セラとKDDI(第二電電)の創業者で、日本航空を再建、経営の神様といわれた稲盛和夫氏。京セラの創業期をつづった青山政次著『心の京セラ 二十年』には、若き日の稲盛氏の会議における一幕が明かされている。