近年、企業による社員待遇の向上が続いている。人手不足や物価の上昇など背景は複数考えられるが、なにより、企業が成長するためには年収アップで人を引き付ける必要がある。ダイヤモンド編集部では、統計専門調査会社の協力の下、最新のデータを反映した3年後の年収を大胆予想。特集『【最新版】3年後の予測年収1355社ランキング!全30業種で「勝ち組」はどこだ?』の#8では、鉄・非鉄業界の予測年収を独自に推計し、全29社のランキングを作成した。(ダイヤモンド編集部 山本 輝)
鉄鋼の市況は「未曽有の危機」でも
大手の多くは平均年収800万円台
鉄鋼業界は、逆風にさらされている。足元では国内の自動車生産の停滞により需要が低迷し、中国では不動産不況により建築向けの鋼材需要などが減少。片や供給面では、中国の鉄鋼メーカーが高水準の生産を続けているため市況価格は低迷中で、世界の鉄鋼メーカーがダメージを受けているのだ。この市況環境を業界の盟主である日本製鉄は「未曽有の危機」とまで表現している。
そんな鉄鋼業界が属する、鉄・非鉄業界の待遇を見ると、大手の給料は低くない。総合商社や銀行などと比べれば見劣りするが、2024年3月期の平均年収では、1000万円を超えるJFEホールディングス(HD)に加え、日本製鉄など多くの企業が800万円台で並んでいる。日本製鉄は、単体の従業員数が2.8万人もいることを考えれば、十分な給与水準といえるだろう。
だが、業界が危機に面する中、待遇は今後どう変化していくのか。ダイヤモンド編集部では、統計専門調査会社の協力の下、24年3月期までの実績値から3年後となる26年4月期~27年3月期の年収を大胆予想した。
試算対象としたのは、鉄・非鉄業界の29社だ。年収が業績などに連動することを前提に、各社の公表資料を用いて重回帰分析による予測モデルを作成、アナリストによる業績予想のコンセンサスデータを当てはめて試算を行った。
その結果、29社のうち、3年後の年収が減少するのは10社のみ。本特集で登場する他の業界ではランキング中の半分程度の企業で予測年収が減少することも珍しくないから、比較的、安定している結果となった。加えて、大手では4~8%の増加率も目立つ。
JFE HDや日本製鉄のみならず、東京製鐵、大和工業、日本軽金属ホールディングス、DOWAホールディングス、住友金属鉱山、フジクラ、住友電気工業、大同特殊鋼、山陽特殊製鋼、日本冶金工業、三菱マテリアル、神戸製鋼所、リョービなど、鉄・非鉄業界の29社の3年後の年収はどれくらい増えるのか?あるいは減るのか?一挙に、見ていこう。