橋本環奈が22年の紅白で見せた
“ママ”のような安心感

 ところが橋本は22年、はじめて司会に大抜擢されたとき、鮮やかすぎるほど堂々と司会進行をやってのけた。物怖じしない、ソツのない橋本の司会っぷりに視聴者たちは舌を巻いた。

 たぶんNHKの人たちも同じだっただろう。『紅白』は生放送で、大所帯のイベントである。時間どおりに進行することが至難の業で、たいていどこかでつまずく。そのうえNHKは決め事が多く、台本が分厚く、時間どおりにあらじめ定められたことをやらないとならない。

 もちろん、全体を見る役割がほかにいて(局アナが多いが近年は内村光良などベテラン芸人が担っている場合も)、朝ドラヒロイン俳優やその年の功労者や人気者である俳優やタレントたちは、個々の場面で進行や盛り上げを担う。だが司会が本業でないため、先述したようにたいていどこかで危うい局面を見せてしまう。

 ところが橋本環奈は危ういところを一切見せなかったのだ。いや、むしろ、誰かが危ういとき、率先してフォローに回っていたくらいなのだ。チーママどころではない、ママのような安心感。それを買われての翌年も司会連投。そして、24年は朝ドラのヒロインに抜擢され、3度目の『紅白』司会も決まった。

 もしかして3年前から、朝ドラヒロインをゴールにして仕組まれたのではないか? そんな説も考察してみたが、『おむすび』の制作統括が、『紅白』の司会を見てオファーしたと語っていた。

「私が橋本さんのそのすごさに気づいたのは、紅白歌合戦で司会をされているときでした。50組ほどのスーパースターばかりのなかで、懐広く、みんなを受け止めて、決して前に目立って出ることなく、でもしっかりと前に進んでいく姿を見て、橋本さんの本業である芝居でこういう姿を見せたいと思ったんです」(Yahooニュースエキスパート 「タイトルは『おむすび』だけど「毎日食べたい町中華の味」制作統括は今度の朝ドラをこう例えた」より)

 橋本の紅白〜朝ドラへのサクセスストーリーは残念ながらまったくの考え過ぎであった。