そして、普段5時間しか寝ていないような人が休日に10時間「寝だめ」をする。これがいちばんよくないパターンです。10時間も眠ると覚醒リズムが狂ってしまいますし、一定以上眠った後は、睡眠の質が落ちていて十分な休息になっていない可能性もあるのです。
中年期からの睡眠不足が、認知症発症のリスクを高める恐れがあるという指摘もされています。イギリスの研究グループが50歳の人たちを対象に、25年にわたって50代、60代、70代それぞれの睡眠時間と認知症について追跡調査した結果、どの年代も1日に7時間の睡眠をとっていた人の認知症発症リスクが最も低く、睡眠時間が6時間以下の人は認知症リスクがいちばん高いことがわかりました。
また、50代、60代で継続して常に睡眠時間が6時間以下の人は、認知症リスクが睡眠時間7時間の人に比べて約30%も高いという結果になったのです。
それ以外にも、動物実験レベルでヒトの結果ではありませんが、睡眠不足のとき、脳には軽い炎症が起きていることがわかっています。
加齢による「眠りの浅さ」を
あまり気にしすぎない
脳の炎症は、アミロイドβなど、アルツハイマー病の原因物質が脳に蓄積する原因と考えられており、この炎症は、深い眠りで治まります。この先の脳の健康のことを考えて、生活習慣を見直し睡眠時間を確保しましょう。
高齢者から「寝つけない」という訴えがよく聞かれますが、これは体内時計が加齢によって変化して生体機能のリズムが前倒しになってしまうのが原因です。朝早く目覚めてしまうこと自体は病気ではありません。
また、加齢とともにノンレム睡眠(編集部注/脳と体の両方が休んでいる深い睡眠状態)の割合が減ってレム睡眠(編集部注/体が休んでいても脳が活発に動いている浅い睡眠状態)が多くなるので、物音で起きてしまうことも増えます。問題はこうした変化そのものではなく、目が覚めているのに「寝なければ」と長く床にいることです。
うとうとしている時間が増えて生活リズムが崩れると、外出や人と会うことが億劫になったり、だるさを感じてまた横になってしまったり、「うまく眠れない」というストレスを感じて悪循環に陥ってしまいます。