虎に翼「はて?」、地面師たち「もうええでしょう」
「はて?」は、NHKの朝ドラ「虎に翼」で伊藤沙莉さんが演じた主人公、寅子の口ぐせです。世間で常識とされていること、「そういうものだから」と誰かが我慢させられてきたことに対して、「はて?」と寅子が疑問を呈するシーンが何度も描かれていました。
道理が通らないものには絶対に納得しない、という寅子の性格から発せられる一言が、当時の男女不平等が大きかった時代への怒りを表現しているだけでなく、現代の日本社会にもまだまだ多くある「なんか納得できないモヤモヤする瞬間」にも通じるということで、視聴者の心を捉えました。
さらに、「もうええでしょう」もドラマのセリフです。NETFLIXのオリジナルドラマ「地面師たち」で、ピエール瀧さん演じる不動産ブローカーが、都合が悪くなったときに発する一言です。お笑い芸人たちを中心に、「もうええでしょうゲーム」が生まれるほど、流行しました。
「これ以上探られたくないときに、なんと言ったらいいのかわからなくてモヤモヤする」といった人々の気持ちに対して、こういえば冗談気味にバシッと言い返せるのか、という気づきを与えた、インサイト溢れる便利なひとことです。
2024年の大ヒット商品「新NISA」のインサイトとは?
また、2024年に大ヒットした商品として、「新NISA」がありました。この大ヒットの要因にも、実は「インサイト」=隠れたホンネが潜んでいます。
新NISAの流行の要因としてよくいわれているのは、旧NISAからの非課税投資枠拡充や非課税期間の無期限化などの税制優遇に加えて、物価や生活コストの上昇による将来不安が大きくなったから、というものです。これらも確かに大きな要因ではありますが、これらは誰もが知っている、いわゆる「常識/定説」であり、「隠れたホンネ」=インサイトとは言えそうにありません。新NISAの大流行におけるインサイトとは、いったい何だったのでしょうか?
NISAやiDeCoなどに代表される、「貯蓄から投資へ」といった政策は、90年代の「日本版金融ビッグバン」から始まり、今までに、さまざまな税制優遇や金融商品が生まれてきました。筆者も学生時代に投資クラブを設立した経験もありますが、ただ、それでも長い間、なんだかんだ言っても「投資はお金持ちのやるもの」、「投資はリスクがある」という意識が世の中では根強く、投資はあまり広まりませんでした。
そんな中、おそらく、新NISAの流行に大きく影響したのは、先ほどの税制優遇と物価上昇に、さらに「若者のSNSリテラシーの向上」が加わったことだと考えられます。