2024年1月1日に発生した能登半島地震から1年が経った。南海トラフ地震や首都直下地震など巨大地震の脅威も去らぬ中、断片的な防災知識ではなく最先端の科学技術や専門家の知見に基づいた正しい防災知識を身につけたいと考える人も多いのではないだろうか。
本記事では、池上彰総監修『いのちをまもる図鑑』(ダイヤモンド社)で第2章「自然・災害からいのちを守る」の監修を務めた危機管理の専門家・国崎信江氏に「アップデートすべき防災知識」を聞いた。
家で過ごす時間が増える年始、防災対策を見直してみては?(取材・構成/杉本透子)

【生死を分ける】大地震が起きたとき、絶対に行ってはいけない場所とは?Photo: Adobe Stock

災害時は駅に多くの人が集まってパニックになる

――大地震が起きたときの対処については『いのちをまもる図鑑』で詳しく解説されていますが、もし駅にいた場合は、どこへ逃げるのがよいのでしょうか。

国崎信江氏(以下、国崎):まず駅から離れることです。大きな地震が起きると、電車は動かないですよね。震度5以上の揺れがあったら電車は線路の安全確認などのため、いったん止まるようになっているので。しばらくは動かないですし、より大きな地震であれば電車が動かないのは明らかなのになぜか駅に人が集まってきます。

あまりにも多くの人が集まると、体が圧迫され、立った状態で呼吸ができなくて失神して亡くなるということが起きかねません。韓国の梨泰院でもいたましい雑踏事故がありましたが、「群衆雪崩」は本当に危険なのです。なので雑踏事故に巻き込まれないためにも、早い段階で駅からは離れたほうがよいでしょう。

群衆雪崩にあわないために「大学」に逃げるのも一手

――駅から離れたあとはどこに向かうのが安全でしょうか?

国崎:駅から離れる際に周辺地図を見ておくといいですね。例えば渋谷にいたら代々木公園に避難しようとか。

私なら大学も一つの選択肢にいれておきます。今の時期は公園に行っても寒いですし、人が多いと地べたに座ることになるので。

――なるほど。大学なら建物もしっかりしていそうですし。

国崎:そうですね。東日本大震災でも都内で大学が困っている帰宅困難者を受け入れた事例もあります。また、帰宅困難者の受入れてくれるビルも近くになるかもしれません。帰宅困難者受入れ施設を公開している自治体もあるので事前に最寄り駅周辺の施設を調べておきましょう。

生命維持の3要素は「空気」「水」「体温」

――これから一層寒くなりますが、冬に自宅で被災した場合に気をつけるポイントはありますか?

国崎:冬は低体温症に注意が必要です。生命維持の3要素は「空気」「水」「体温」です。なので体温保持はとても大事なのですが、停電してしまうとエアコンもヒーターも使えなくなり、体温保持が難しくなります。そういう場合は、スキーウェアを着るとか、重ね着して温まる、カイロを使うなどして、温めることを大事に過ごしていただきたいと思います。

※本稿は、『いのちをまもる図鑑』についての書き下ろしインタビュー記事です。

『いのちをまもる図鑑』第2章監修者
国崎信江(くにざき・のぶえ)

危機管理アドバイザー。危機管理教育研究所代表
女性として、生活者の視点で防災・防犯・事故防止対策を提唱している。国や自治体の防災関連の委員を歴任。『10才からの防犯・防災』(永岡書店)や『おまもりえほん』(日本図書センター)などの監修もつとめる。