変革を前に分かれた人々の反応
熱狂する人、抵抗する人……

 さて、当時のことを思い返すと、このインターネット革命を前にして、多くの会社ではさまざまなタイプの人々が共存する状況にあった。それぞれのタイプには独自の反応や行動が見られ、これが組織内外のダイナミクスを形作っていた。

1つ目のタイプ: 新しいトレンドに熱狂する人たち

 このグループは、新技術に対して非常に積極的で、インターネットの可能性に心躍らせた人々だった。彼らは「インターネットが世界を変える」というビジョンに熱中し、その技術を積極的に採用したのである。一部の人はスタートアップを立ち上げたり、新しいビジネスモデルを試みたりするなど、非常に行動力があった。

 しかし、熱意が先行するあまり、技術的な課題や限界を軽視してしまうこともあった。そのため、急速に成果を出す人もいれば、失敗に終わる人も多かった。

2つ目のタイプ: シニカルな解説者

 このタイプには、もともと情報技術に詳しいエンジニアや技術者が多く含まれていた。

 彼らはインターネットの技術的な課題や運用上の問題を深く理解しており、その知識ゆえに「これだけの問題を抱えた技術がすぐに社会を変革することはない」と、冷静かつシニカルに状況を捉えていた。

 彼らの指摘は部分的にはしばしば正確で、過剰な期待を持つ熱狂的なグループを抑制する役割を果たした。

3つ目のタイプ: 無関心層

 このグループは、インターネットの到来にも特に関心を示さず、日常業務に集中していた。

 彼らにとって新しい技術は、自分の仕事に直接影響を及ぼすまで「よく分からないもの」だった。

 こうした無関心層は、会社の安定的な運営を支えた。一方で、新技術を取り入れる際には抵抗感を示すこともあり、変革が進むスピードを鈍らせる要因となることがあった。

4つ目のタイプ: 現行ビジネスモデルの保護に固執する人たち

 このグループは、新しい技術が既存のビジネスモデルを脅かす可能性を恐れ、現状維持に固執する人々であった。例えば、従来の紙媒体や店舗販売に依存していた企業の管理職などが該当する。彼らは新技術を「脅威」として認識し、変革に強く抵抗した。

 具体的には、リソースを旧来のシステム維持に投入したり、新しい取り組みにはほとんど資金を配分しなかったりといった行為で妨げた。短期的には、このような態度は、利益確保につながり当人たちは逃げ切ったものの、不作為の代償は、後になって会社の競争力を大きく低下させた。