断絶の時代
ダイヤモンド社刊
2520円(税込)

 「企業は政府には不可能な二つのことができる」(『断絶の時代』)

 ドラッカーは、企業は事業をやめることができ、しかもやめざるをえなくなることがあると言う。いかに頑固であろうと、市場の試練には抗し切れない。

 さらにドラッカーは、企業は社会が消滅を許す唯一の組織だと言う。病院や大学はいかに役に立たず生産的でなくとも、戦争や革命でも起こらない限り、その消滅は社会が許さない。

 企業は利益を上げる。逆にそのことによって、損失を被るリスクを負う。このリスクが企業の強みにつながる。あらゆる組織のなかで、企業だけが業績の試練を受ける。利益が企業の評価基準になる。

 いかに陳腐化しても、病院はコミュニティに必要とされる。最低水準の大学さえ、ないよりはましと言ってもらえる。コミュニティや卒業生がわれらの大学を守る。

 消費者にはそのような感覚はない。長いこと使ってきた製品であっても、買う義務があるとは思わない。どれだけ便利か、どれだけ安全かだけを考える。役に立たなければ、メーカーが消滅しても残念には思わない。

 利益を上げるなとの主張は俗受けする。だが、投資家の本当の役割は損をしうるところにある。その役割は、リスクを負い、損失を被ることにある。この役割を果たしうるものは、政府ではなく投資家である。

 「私有であることが重要なのは、社会は倒産し消滅しうる組織を必要とするからである」(『断絶の時代』)