なぜか勉強では「才能」を意識しない
サッカー選手を支援する仕事を通しても、教育に関して思うところがいろいろあります。私が経営する学習塾の生徒で、野球やサッカーなどスポーツをしているお子さんはとても多いのですが、親の9割は子どもをプロの選手にすることは、はなから考えていません。「スポーツの世界はもともとの身体能力がものを言うから」とか「スポーツは生まれつきのセンスである程度決まってしまうから」と言うのです。
一方で、勉強に関してはどの親も「やればできる」と信じています。もちろん我が子について「やればできる」と信じてあげることは重要です。しかし実際には、勉強もスポーツと全く同じで、才能や向き不向きがあるものです。他人と同じだけ頑張ったからといって、同じ結果が出るというものではありません。そこを間違えると、子どもはとてもつらい立場に立たされてしまいます。
また価値観という意味でも、スポーツの世界では中卒や高卒でも年収5億円を稼ぐ選手がいます。もちろん年収の多寡だけで人生が決まるわけではありませんが、これは学歴だけが成功の指標ではないことを示しています。しかし、日本の教育システムは依然として、一律の基準で子どもたちを評価しアベレージを引き上げることに傾注しているのです。
余談ですが、若い世代で、スポーツの才能がとてもある子は、10代でヨーロッパのサッカーチームに引き抜かれ、ヨーロッパで活躍することが多くなりました。日本にそのままいてプロになるより、海外で活躍することが現実的に夢を叶えるチャンスになるという考えからです。
もちろん日本人選手が海外で活躍するのはよいことですが、優秀な人材が海外に流れ、日本の競技レベルの地盤沈下が甚だしいことも問題です。このままでは、スポーツができる子は早い時点で日本を離れてしまい、日本にスポーツそのものの地盤が弱くなってしまうという懸念もあります。