技術の話では、AIの発達に鑑みれば、これまでのように4教科にまんべんなく時間をかけて同じような教え方をする教育が有効なのかという点も多いに疑問です。注意深く選択すればYoutubeの動画などのコンテンツで専門的な知識や学術的な知識も十分に学べる時代です。もしかしたら、古文の活用形や、漢文のレ点については学びたい子や興味がある子だけが適宜AIを駆使しながら学習し、必修で学ぶのは英語と数学だけで十分な場合もあるかもしれません。

 技術の発展を教育に取り入れることで、より多くの子どもたちの可能性を引き出すことができるはずなのです。実際に、そうした変化に応じた先進的な取り組みをしているのは、まだごくわずかな学校にすぎませんが、多くの学校や教育機関が、アベレージ教育の限界に気づき始め、新しいことを取り入れようとしている段階にあります。

好きな教科しか勉強しない子をどう育てるか

 このような状況下で親はどのように対応すべきでしょうか。まず重要なのは、子どもの得意なものを伸ばすことです。従来の考え方では、苦手な科目を克服することに重点が置かれがちでしたが、それでは子どものやる気を失わせてしまう可能性があります。

 例えば、算数が好きで算数だけ勉強したいという子どもがいたら、それを止めず、絶対に応援するべきです。口が割けても「算数ばかりやらないで、国語や社会も勉強しなさい」などと言ってはなりません。社会や国語の勉強時間を減らしてでも、好きな科目に集中させてかまわないのです。子供にとって、好きな教科があるというのは本当にラッキーなことです。

「いや、受験では国語や社会ができなければ……つまり不得意科目があれば合格できない」と思われるかもしれませんし、親御さんの世代やそれより上の世代は「アベレージ教育」を当たり前に受けてきて、「得意科目を90点から95点に上げることは、苦手科目を30点から70点に上げるよりも難しい」などと言われてきたのかもしれません。

 もちろんそうした側面もありますが、まずは得意な科目を伸ばすことで、子どもはいい意味での自信をつけられます。そこで身につけた前向きな気持ちは、子の成長全般にとって何にも代えがたいものです。その経験や達成感は他の科目にも波及し、必ず全体的な学力向上にもつながります。