「人手不足倒産」や「後継者難倒産」などで
企業倒産は引き続き「緩やかな増加局面」に
2025年の企業倒産は引き続き「緩やかな増加局面」が続きそうだ。企業にとってのコストアップにつながる厳しい外部環境が好転する兆しはなく、今月中にも予想される追加利上げ決定や、春闘前後のさらなる賃上げの動きに対応しきれず、中小零細企業の「あきらめ倒産」や「あきらめ廃業」が一段と広がるだろう。
とくに、「2025年問題」(=団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となることで起こる諸問題)は倒産動向にも影を落とし、経営者の高齢化や人手不足の影響が色濃く出てくることが予想される。2024年は「物価高倒産」が倒産件数を押し上げたが、2025年はこれに加えて「人手不足倒産」や「後継者難倒産」への注目度が高まる1年となりそうだ。
2024年に過去最多の件数を更新した「粉飾倒産」は、2025年も発生が相次ぐだろう。直近でも、歯科医療用器械・器材を扱う石川県の専門商社「ADI.G」は、11月に取引金融機関に“不適切な会計処理”を報告後、継続支援の同意が得られず、負債64億円を抱えて12月16日に民事再生法を申請した。同社は周囲から“良い会社”と見られていただけに、今後も、粉飾発覚を契機とした「優良企業の突発的な経営破綻」には警戒度を高める必要がある。
2025年の企業倒産は「新陳代謝」と「優勝劣敗」が加速する1年となるにちがいない。2024年の倒産件数(9901件)は3年連続で増加したとはいえ、リーマン・ショックの影響が深刻化した2009年(1万3306件)のような危機的状況にはほど遠い。
負債総額を見ても、上場企業や新興不動産デベロッパーの倒産が相次いだ当時と比べ3倍以上の開きがある。2025年の倒産件数が2009年の水準まで急増する事態は想定していないものの、小規模事業者を中心に「新陳代謝」と「優勝劣敗」の動きが進みながら、引き続き緩やかな増加局面が続く見通しである。
なかでも、人手不足の影響が2024年以上に広がるとともに、経営体力が限界に達した末の「賃上げ難型」倒産の多発も中小企業を中心に懸念される。利益で借入金の利息が賄えず、政府や金融機関の支援で延命を続けてきた推計20万社超の「ゾンビ企業」の淘汰もさらに進むだろう。金融機関の選別からふるい落とされる企業も一定数出てくるにちがいない。多くの企業が人手不足解消に取り組むなか、法的整理や私的整理の手法を用いて事業や雇用を別会社に承継したうえで、長年の債務を処理するスキームも活発化していきそうだ。