インドの大人気車種を、日本で格安で販売した「バレーノ」

 2016年当時、バレーノの国内販売計画は年間6000台。しかし実績は4年間で2500台程度。単純計算で当初2万4000台売る計画が、結果的には2500台程度だったのだから、これは「残念」としか言いようがない。

2016年に発売されたバレーノ(広報写真)2016年に発売されたバレーノ(広報写真)

森:そうですね……。

F:インドでは大人気で、約120の国と地域に輸出されるスズキの金看板が、どうして日本では不調だったのでしょう。自己分析はできていますか?

森:元々バレーノを日本に入れた時、「インドで造ったクルマをそのままの形で出して、少しでもお客様に安く提供しよう」というスタイルだったんです。具体的に言うと、140万円くらいで出しました。

F:安い!軽より安いじゃないですか。それをインドで売っている形そのままで。つまり日本仕様にしないで売った。

森:そうです。まったく同じ形で。インドは同じ右ハンドルの国ですし、灯火類や排ガスの対応などの法規対応だけして、あとはそのままで。その分価格をうんと抑えて売ったわけです。バレーノはスズキの中で世界販売台数1位をスイフトと争う人気車種です。自社の製品をこう言うのも何ですが、クルマとしての基本性能は非常によくできている。日本でもそのままで売れるだろうという読みがありました。

F:確かに。当時、プロからの評判は決して悪いものではありませんでした。「欧州車のようなテイストがある」という記事を読んだ記憶があります。では何が足りなかったのでしょう。