2016年発売、バレーノに足りなかったものとは?
森:今にしてみれば、必要な装備が足りませんでした。特に先進安全装備。これが最新のものではなかったので。
F:先進安全装備。でもクルマを買う時に、消費者はそこを重視するものでしょうか?私は「付いていればいいや。別に、なくてもいいし」くらいにしか思っていませんが。
森:そう思われるのは少数派です。今のお客様は、みなさんやっぱり「安全」を重視されるんです。販売店からは「これが付いていないから、初めからショッピングリストにすら載らない」とまで言われました。営業現場の人と話すと、ご年配のお客様がクルマを買われる際はお子さんが付いてきて、「最新の安全装備が付いていないクルマは買っちゃダメ」と言うらしいです。
F:そのような雰囲気になったのは、やはり池袋の暴走事故以降でしょうか。先日、あの人は獄中死したようですが……。
森:いや、それよりも前からです。池袋の事故が起きたのは2019年の春頃ですが、お客様の意識は、それよりも前から安全に向いていました。あとは4WD。バレーノはFFしか出さなかったので。雪が降る日本では、やはり4WDの需要が高いんですね。
フロンクスは最初から日本でも売る想定で設計した
F:バレーノは最初から日本でも売ることを想定して設計されたのですか?
森:いえ。途中からです。初めは計画していませんでした。でもフロンクスは最初からです。初めから日本でも売ることを想定して設計しました。だから4WDも用意したんです。4WDは日本向けだけに設定された仕様です。インドで売っているのはFFだけです。いまフロンクスは世界70カ国に輸出しているのですが、他の国は全てFFで出しています。
F:インドで4WDの需要はありませんか?
森:ほとんどありません。北部のネパール国境など、ごく一部雪の降る地域もありますが、それほど多く人が多く住む場所ではありません。本格的な悪路走行となると、また別の種類のクルマを選ぶでしょうし。