子供から老人までが
一緒に楽しめるスポーツ

 それはゲイツがハマり、複数の関連ベンチャーに投資したというピックルボールというスポーツである。

 ピックルボールとは、近年米国で爆発的に愛好者が増えているスポーツで、〈テニスコートの約3分の1、バドミントンコートと同じ広さのコート内で、パドルというラケットでプラスチック製の穴開きボールを打ち合うスポーツ〉(一般社団法人ピックルボール協会)。

ピックルボールPhoto:PIXTA

 その発祥は1965年にさかのぼる。ある日、暇つぶしに何か遊ぶものはないか、面白い遊びをしたい、と考えたジョエル・プリチャード、バーニー・マッカラム、ビル・ベルの3人が、あり合わせの道具だったネット、ウィッフルボール、卓球のラケットを組み合わせ、家族全員で一緒に遊べるゲームを考案したことに始まる。

 面白いことに、ゲイツの父が考案者の3人と友人だったことで、ゲイツも自宅に作られたピックルボールコートで遊ぶようになり、以来、半世紀以上もプレーし続けているというのだ。

 卓球、テニス、バドミントンのいいとこ取りをしたようなピックルボールは、ゲイツが半世紀以上プレーし続けられていることからも分かるように、運動量が多すぎないため、シニア層にも好まれているという。もちろん、ゲイツ家がそうであったように、子供から老人までが一緒に楽しめるスポーツでもあるというのだ。

米国では国民的スポーツに
バフェット氏も愛好者

 日本ではまだまだ知名度の低いピックルボールだが、2023年APP(Association of Pickleball Players)によると、同年3月時点で、約5000万人近くの米国人がピックルボールをプレーしたと公表(同協会)、というのだから、米国ではまさに国民的スポーツといえよう。

 事実、「投資の神様」として知られるウォーレン・バフェットもピックルボール愛好者で、関連ビジネスに投資し、ゲイツともプレーすることで知られている。

 発祥をたどれば分かる通り、ピックルボールは既存のスポーツをプレーすることにこだわらず、手元にある限られた資源(道具)から、自分なりのアイデアで新しいルールを作り出したことで爆発的なヒット、普及につながった。

 ゲイツがピックルボールを好むのも、そのプレーが老若男女で楽しめるという許容度の高いスポーツというだけではなく、自身の創業や哲学と同様、「仲間との新しい発想」「楽しもうとすること」から生まれたものであるが故、なのかもしれない。

 ではこれを私たちはどうビジネスに生かすべきか。いきなり「既存のルールにこだわらない発想を持て」と言われても急にはできない。まずは頭を柔らかくして、ピックルボールのような新しいスポーツに触れてみるところから始めてみてはどうか。