「再販制度を守らなければならない」
日本文化を支える命綱

 書店の危機をさらに深刻化させる要因として、公正取引委員会が進める再販制度の見直しが挙げられる。この制度は、日本における出版文化の基盤として長年機能してきたが、経済のグローバル化やデジタル化の波の中でその存在意義が揺らいでいる。

「再販制度がなくなれば、地方の書店は価格競争で大手に太刀打ちできなくなる。全国どこでも同じ価格で本を買える仕組みは、日本の出版文化にとって不可欠です」。角川氏はこのように語り、再販制度が持つ重要性を強調する。

 さらに、ネット書店の送料無料やポイント還元についても、書店の存続にとって大きな脅威だという。「ネットの利便性は否定しませんが、それが地方書店を犠牲にして良い理由にはなりません。フランスやドイツでは再販制度がない代わりに、政府が出版文化を税制優遇や補助金で支えています。日本も同じ仕組みを整えるべきです」

 角川氏は、日本の再販制度が持つ特異性にも触れる。「韓国の出版業界の専門家からも『日本の再販制度は羨ましい』と言われるほど、全国均一価格で本が手に入る仕組みは画期的です。この制度を守るために全力を尽くす必要があります」。彼の言葉には、書店を救うことが日本全体の文化を守ることにつながるという強い信念がある。