池上彰×佐藤優 日米新政権“ウラ読み”#1Photo:Diamond

成果を上げた日中首脳会談の舞台裏とは?石破首相とトランプ次期米大統領と話は合うのか?少数与党となった石破内閣はどこまで続くのか?池上彰氏と佐藤優氏が語り尽くした。(ジャーナリスト 池上彰、作家・元外務省主任分析官 佐藤 優、構成/石井謙一郎)

石破首相の両手握手は
外交カードになる

池上 ペルーで開かれたAPECの首脳会議に参加した石破茂首相が、外交儀礼を欠くのではないかと批判されました。渋滞に巻き込まれて遅刻したせいで集合写真の撮影を欠席したり、中国の習近平国家主席が右手だけ出したのに両手で握り返したり。

佐藤 外交の世界では普通、片手に対して両手握りはあまりしません。「言うことを何でも聞きます」というニュアンスが出るからです。習主席と両手握手をしてしまった以上、トランプ氏やプーチン大統領と会うとき片手でできるのでしょうか。

 しかし僕は、この両手握手は外交カードになると思うんです。石破首相が関係を強化したい首脳とは両手握手。あまり強化したくない人とは片手握手。どちらの握手にするかで、シグナルを出す。災い転じて福にする理屈を考えるのも、官僚の仕事です(笑)。

池上 あれは、無意識に出てしまったんでしょうか。

石破・習会談前に仕込まれている
日中関係でこれから起こること

佐藤 外務省幹部のコメントとして、「日本人の習慣として出てしまっただけだろう」と釈明していましたが、私はわざとだったと考えています。

 プロが見れば分かるのですが、リマで習主席と会談する3カ月くらい前から、仕込みが始まっています。11月4日には秋葉剛男・国家安全保障局長が北京を訪問して、王毅氏と4時間半も会いました。

 みんな気付いていないのですが王毅氏は外相としてではなく、中国共産党中央外事工作委員会弁公室主任の常任委員として秋葉さんに会っています。これは、外務省と中国政府ではなく、官邸と中国共産党にルートができたことを意味します。

 この会談を仕上げとして、APECにおける石破・習会談を取り付けたわけです。ということは、福島第一原発の処理水に関わる海産物の輸出問題と、スパイ容疑で拘束されている日本人の問題に、解決のめどが立っているはずです。石破首相の訪中までに、ほぼ固まっていると思いますよ。