179人死亡事故で問題視
務安は「赤字最多」空港だった!

 務安空港の事故では、地方空港が多すぎることも問題視されている。韓国国内には特殊目的の空港を除くと、ソウル・仁川、ソウル・金浦、釜山、済州、大邱、清州、務安の7カ所の拠点空港と、国内線が主な地方空港が8カ所ある。

 しかし国内線の需要は限られ、金浦~済州路線こそ旅客数・座席数とも世界一を誇るものの、それ以外の路線の需要は低下している。背景には、2004年から順次開業した高速鉄道の発達や、少子高齢化も挙げられる。

 ゆえに黒字の空港はソウルの2空港、釜山、済州の4空港しかない。実に、11空港が赤字だ。

韓国ソウルで開かれた記者会見で、謝罪の言葉を述べる済州航空のキム・イベCEO(右)と同社関係者韓国ソウルで開かれた記者会見で、謝罪の言葉を述べる済州航空のキム・イベCEO(右)と同社関係者 Photo:EPA=JIJI

 このうち、事故が起きた務安空港の赤字額が253億ウォン(約27億円、2023年)で、最多であるのは特筆すべきことだ。経営難が、人員不足など安全面に直結したという指摘もある。実際、務安空港は鳥類退治のために4人が勤務するはずだったが、事故当日は1人しかいなかった。

 そうした状況においても、韓国内では地方振興のため、なんと今現在も10の空港が建設中または新規建設を推進している。専門家をはじめ国民からは、「需要がないのに無理して空港を建設するな」といった批判が出ている。

 翻って日本も1990年代から2000年代にかけて地方空港が過剰に建設され、不採算路線が増えたことで航空会社の収益を圧迫した。今回の痛ましい事故をきっかけに歯止めがかかるのか、インフラ整備のあり方が問われているだろう。

 テーマ(3)と(4)は、『大韓航空とアシアナ航空の合併が「JALの経営破綻前」に似ているワケ』で解説する。