LCCは9社が乱立し過当競争!
整備コスト削り安全面で懸念

 務安空港の事故で改めてクローズアップされたのが、韓国LCCの過当競争だ。LCCの数は、大手傘下の3社(ジンエアー、エアソウル、エアプサン)の他にも、チェジュ航空、イースター航空、ティーウェイ航空、エア・プレミア、エアロK、パラタ航空(旧フライ江原)と実に9社に上る。全てのLCCが大手傘下にある日本や台湾と比べると、独立系が多い。

 韓国の航空市場では2005年以降、急速にLCCが台頭し、18年には国内線で50%・国際線で35%のシェアをLCCが占めるようになった。日本だと、LCCのシェアは国内線17%・国際線26%程度。中国だと、国内線11%・国際線14%である。このことからも、いかに韓国においてLCCのシェアが高いかが分かるだろう。

 韓国の国土は日本の4分の1程度であり、旅行は海外に行く国民が多い。そのため、韓国エアラインの主戦場は早いうちから国際線だった。首都のソウルだけでなく釜山、大邱、済州といった地方都市、そして事故が起きた務安など国内各地からアジア各地を結ぶ近距離国際線が多いのが特徴だ。

 務安空港で事故を起こしたチェジュ航空機は、タイのバンコク・スワンナプーム国際空港から帰国する便だった。1月末に出た報告書によると、事故機の両エンジンに、冬になると大群で飛来する渡り鳥のDNAが残っていたという。ただし、着陸装置が展開しないまま着陸した原因や、フライトレコーダーが事故の4分前に記録を停止した理由については結論付けていない。

 そのため、韓国メディアではLCCの安全性に対する懸念が絶えない。一例として、25年1月1日のKOREA WAVEでは、以下のような実態を明らかにしている。

● LCCの航空機1機機当たりの整備費用は平均42億9000万ウォン(約4億5000万円)。これは、大手2社の94億6000万ウォン(約10億円)の半分以下である。
● 航空機1機当たりの整備士数は、大手が16人程度、LCCは10人程度と60%程度と差がある。
● 航空機1機当たりの月平均稼働時間は大韓航空が355時間、アシアナ航空が335時間であるのに対して、チェジュ航空は469時間、ティーウェイ航空は386時間に達する。

 LCCの過当競争に話を戻すと、以前から再編のうわさが絶えない状況にある。今回の大事故を受けて、各社とも安全性への投資が最優先となっており、再編の動きは鈍化した。とはいえ、安全投資を行う基盤となる収益確保のためにも、再編熱が高まる可能性は大いにある。

 日本に就航するLCCも多いだけに、どんな再編劇になるのか、今後の安全対策は万全なのか、続報を待ちたい。