一方で、懸念されるのが人員整理を含めたリストラだ。これまでもアシアナの労働組合は合併に反対し、過激な活動を展開してきた。

 翻って日本でも、かつてJALと日本エアシステム(JAS)が合併した際、複数の労働組合が混沌とし、社内が派閥争いや権力闘争に明け暮れた挙句、事故が増えたと指摘されている。大韓とアシアナの合併に関しても、社内対立や勢力争いが激化すれば、そうした「二の舞」になりかねない。

大韓航空とアシアナ航空の合併が「JALの経営破綻前」に似ているワケPhoto:SOPA Images/gettyimages

 他にも火種はある。両社の傘下にある3つのLCC(ジンエアー、エアソウル、エアプサン)は1社に統合される。このうちエアプサンは地元の説得が難航しているのだ。同社には釜山市や、地元企業が多数出資している。そのため、ソウルを拠点にするジンエアーやエアソウルと合併することに対して、関係各所が猛反発している。

 そして何より、利用者の反応も懸念材料だ。統合によって「航空チケットが値上がりする」「同一路線が廃止されると予約しにくくなる」「アシアナのマイレージを貯めていたが、その価値はどうなるのか」といった不安の声も絶えない。

 合併を無理やり進めれば、かつてJALとJASが陥ったようにシナジーをうまく発揮できず、ついには破綻の一因に至るケースもあるだけに慎重さが求められる。25年の航空業界で最も注目したいトピックの一つといえるだろう。

大韓航空とアシアナ航空の合併が「JALの経営破綻前」に似ているワケPhoto:Chung Sung-Jun/gettyimages