独立系LCCは生き残れる?
再編でフルサービスに転換の「奥の手」

 大韓とアシアナの合併で、傘下LCC3社は統合し、最大手のLCCが誕生する。それでは、その他の独立系LCCは今後、生き残れるのだろうか。

 数年前から一部のLCCは、長距離路線に進出したり、フルサービス化を目指したりといった新たな戦略を執っている。

大韓航空とアシアナ航空の合併が「JALの経営破綻前」に似ているワケPhoto:PIXTA

 例えばティーウェイ航空は欧州やオーストラリアへ、エアプレミアは米国へ路線を展開。フライトは10時間以上かかるので、LCCであるにもかかわらずサービスレベルを引き上げて、両社とも機内食を無料提供している。エアプレミアに至っては韓国映画が見放題の液晶モニター付きで、アルコールが有料であること以外フルサービスキャリアと遜色ない。

 実は、大韓とアシアナの合併に際して、EUが寡占化を問題視したため、一部路線は競合他社へ渡さざるを得なかった。これに伴い、エアプレミアが主に北米路線を、ティーウェイが欧州路線を開設したというわけだ。

 しかし、両社とも機材をはじめリソース不足感がある。特にティーウェイは機材繰りで「前代未聞の珍事件」を起こして大阪に向かうインバウンド客204人が怒り、裁判沙汰になった。※詳細は『格安航空なのに「機内食2回」「手荷物タダ」進化するLCCと本当のコスパ』を参照

 また、大韓と比べると国内や短距離路線のネットワークも限られるため、長距離路線で収益を出すのに欠かせない、乗り継ぎ客の獲得が課題である。

 ただし、ティーウェイとエアプレミアに関しては、韓国のレジャー大手である大明ソノグループが経営権を取得する方針で、将来的に統合を目指していると報じられた。統合で経営力を強化することで、新たな2番手ポジションを狙う考えがありそうだ。

 ティーウェイがエアバスA330、エアプレミアがボーイング787と主力機材が異なることなど、統合に向けての障壁は少なくない。そもそも、LCCからフルサービスキャリアへの転換は、あまり前例がない。

 成功例として、成田にも就航しているカナダのウエストジェット航空が挙げられる。が、同社は国内線や短距離国際線を充実させて、エアカナダに次ぐ2番手の地位を固めた上で、太平洋や大西洋を越える長距離路線に参入した。

 韓国は国内の領土が狭く、近隣諸国は日本や中国という航空規制の厳しい国が多い。果たして同じように成功できるのか、見ものである。