東大生のトップ層が集う「G1クラス」のスゴすぎる中身『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク

三田紀房の受験マンガ『ドラゴン桜2』を題材に、現役東大生(文科二類)の土田淳真が教育と受験の今を読み解く連載「ドラゴン桜2で学ぶホンネの教育論」。第27回は「東京大学での英語授業」について考える。

「解釈が分かれる」複数解のある授業

 高校3年生に進学した龍山高校東大専科の2人の生徒・天野晃一郎と早瀬菜緒は東京大学現役合格に向けて本格的な勉強を始める。真っ先に手をつけたのは「大学受験の最重要科目」英語だった。

 英語が重要視されるのは受験だけではない。大学に入ってからも、文理や学部を問わず英語を学ぶ機会が多くある。今回と次回の2回に分けて、各大学でどのような英語の授業が行われているのかお伝えしよう。

 今回は東京大学の英語の授業を紹介していこう。東京大学前期課程では英語の授業は主に「英語一列」「FLOW」「ALESS/ALESA」「英語中級」の4つに分かれる。

「英語一列」の授業では、東大が作成した教科書『多元化する世界を英語で読む』の読解を軸に授業が進められる。バンクーバーのネズミ駆除、コロナ禍とスペイン風邪流行の比較、ナイジェリアの映画産業など扱われるテーマは多岐にわたる。

 文法・単語解説や、本文中の話題についてのディスカッションなど「読む」中心の授業だが、レベル別クラス分けの最上位“G1”クラスでは全て英語で授業が進められる。

 私が印象的だったのが、先生方の英語を教える姿勢だ。意図的かどうかはわからないが、テキストには先生方の間でも「解釈が一定しない」もしくは「わからない」という箇所が英文に含まれている。

 そんな時は先生も「ここは解釈が分かれる」として、学生と同じ立場で解釈を検討したことがあった。1つの英文に対して1つの日本語訳が唯一の正解として決められていた受験英語とは一味違う。

「FLOW」はスピーキングの授業だ。自己申告制で6段階にクラスが分けられ、ネイティブの先生とともにディベートやディスカッションを行う。生徒間のやり取りももちろん英語だ。

「英語を学ぶ」ではなく「英語で学ぶ」

漫画ドラゴン桜2 4巻P71『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク

 文系・理系で分れて行う「ALESS/ALESA」の授業は最も特徴的だと言えるだろう。これは正式名称を“Active Learning of English for Science Students”“Active Learning of English for Students of the Arts”と言い、ネイティブの先生による指導のもと半期で英語論文を執筆するというものだ。

 論文執筆の基本となるリテラシーはもちろん、英語での注釈、出典の書き方や英語論文ならではの特徴的な表現まで丁寧に教えてくれる。

 扱うテーマは担当教員の専門に応じて多岐に渡り、文系の例としては「DEI(多様性、公平性、包括性)政策について」「美術」「西洋のおとぎ話」などが挙げられる。

 約2500語の論文執筆が最終課題として課され、さらにプレゼンテーションやピアレビュー(学生が互いの論文を批評すること)などもある。このため多くの東大1年生にとっては学期末の頭痛の種になるが、優秀な論文は教員が執筆する論文に引用されるなど、本気で取り組めば大いに成長できる授業だ。

 最後に「英語中級」の授業を紹介しよう。これは各教員の専門や興味関心に基づいて自由なテーマや形式で進められる授業だ。

「ニューヨーク・タイムズの記事を読んで発表する授業」「BBCニュースを聞いてディスカッションする授業」などがあり、あらかじめ指定した第1希望〜第8希望から抽選で履修が決まる。

 これらカリキュラムの最大の特徴は、ほとんどの授業が文理混合で行われるということだ。基本的にどの授業でもディスカッションを行う機会があるため、科学的視点と社会的視点が交わり多角的な角度から現代社会を見つめることができる。

 また、基本的な語彙や文法事項を扱うことは少なく、むしろ論文の内容について議論が起こることが多い。まさに「英語を学ぶ」のではなく「英語で学ぶ」ことが実践されていると言えるだろう。

 次回は、他大学ではどのような英語カリキュラムが取られているのかを、学生目線で見ていこうと思う。

漫画ドラゴン桜2 4巻P72『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク
漫画ドラゴン桜2 4巻P73『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク