「慶應大学」と「東北大学」英語の授業にみるスタンスの違い『ドラゴン桜2』 (c)三田紀房/コルク

三田紀房の受験マンガ『ドラゴン桜2』を題材に、現役東大生(文科二類)の土田淳真が教育と受験の今を読み解く連載「ドラゴン桜2で学ぶホンネの教育論」。第28回は「有名大学での英語授業」について考える。

多くの大学で「基本」と「専門」教える

 東京大学現役合格を目指す天野晃一郎と早瀬菜緒は「大学受験の最重要科目」英語の勉強を本格的にスタートさせる。その中でもリスニングの重要性が強調され、外部講師によるレッスンが始まった。

 東大における英語の授業を紹介した前回に引き続き、今回は各大学の授業を見ていこうと思う。各大学に通う私の友達に、学生目線でどのような授業が行われているのかを聞いてみた。

 多くの大学で共通するのが「基本的な英語を学ぶ共通の授業」と「専門的な内容に関する選択授業」が分かれている点だ。英語文法を英語で講義する早稲田大学文学部や、自校の歴史について英語で学ぶ北海道大学、各教員の専門分野を英語で講義・ディスカッションする京都大学など各大学の特色が光る。

 高等教育機関として、英語論文の執筆を課す大学も多い。

 京都大学では、1年次の後期に「議論の余地のある」話題について論文を執筆する授業がある。同様に慶應義塾大学経済学部では前期は800語、後期は1200語程度の論文を提出することが求められる。

 ちなみに慶應義塾大学は全体的に生成AIの利用に慎重で、私が話を聞いた中だと、先生のチェックもかなり厳しい部類に入る。「ChatGPTをライティングでの修正に活用する機会があった」という東北大学文学部とは対照的だ。

 大学として英語を重視したカリキュラムをとっている国公立大学として、一橋大学が挙げられる。

 一橋大学では、1年生全員にPACE(Practical Applications for Communicating English)という授業が課され、ネイティブの先生の元でライティングやスピーキングを学ぶ。この授業は英語教育を実施する国際団体ブリティッシュ・カウンシルと共同で行われる本格的なものだ。

 そのほかにも、海外留学や海外インターンを卒業の条件としているコースがあったり、豊富な提携先や充実した資金援助による交換留学も盛んだったりと、やはり英語を「使う」機会が多い。

TOEFL活用も増えている

漫画ドラゴン桜2 4巻P93『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク

 医療系の学部はやはり英語も特徴的だ。

 慶應義塾大学薬学部は、「生物の授業を英語でやる感じ」であるという。習熟度別のクラス分けではないため、文法や構文は簡単だというが、やはり英語で専門用語を覚えるのは難しいらしい。

 同じ医療系でも、順天堂大学医学部のカリキュラムは一風変わっている。順天堂大学の入試(一般選抜A方式)において、英語の割合は500点中200点と高い。そのため同学部では英語教育に力を入れており、なんと5限中4限が英語で占められる通称「英語デー」が設定されているそうだ。

 プレゼンやポスター発表などを行う実践的なものもあれば、英語での文章読解、検定対策専門の授業など扱われる範囲は幅広い。英語の授業以外でも、必修生物学のテストにおいて大問1つが英語で出題されるという。

 私が話を聞いた多くの大学で共通しているのは、TOEFLの得点を活用していることだ。北海道大学や順天堂大学医学部ではクラス分けの基準になり、東北大学文学部では成績の一部になる。

 東京大学ではそのような制度はとっていないが、入試も外部試験で代用する学校が増えていく中で、学部や専攻によらない純粋な「英語力」の基準として外部試験を利用する大学は増えていくだろう。

 今回複数の友人から言われたのが「実践的なコミュニケーション機会が豊富なのは嬉しいが、基本的な文法解説などは授業目的が曖昧であまり興味がないものが多い」ということだ。

 近年では実践的な機会に注目が行きがちだが、語学学校とは異なる「大学英語」の矜持として、より学術的な英語媒体に触れることが求められているように感じた。

漫画ドラゴン桜2 4巻P94『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク
漫画ドラゴン桜2 4巻P95『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク