日本経済が成長と分配の好循環に入る上でカギを握るのは、持続的な賃上げである。一方、日本企業が直面する最大の課題は人手不足だ。この両面から今、労働生産性の向上が強く求められている。そのための効果的な施策が、デジタル技術の活用とそれに伴う変革すなわちDXである。この分野で調査・研究を続ける日本生産性本部の上席研究員の木内康裕氏を取材して談話記事としてまとめた。連載3回でお送りする。(文/ダイヤモンド社 論説委員 大坪 亮)
日本の1人当たり労働生産性は
OECD 加盟38カ国中32位
日本生産性本部は1981年以来、日本の生産性を調査し発表しています。近年は、国際比較の中で日本の生産性が低下してきているという発表が続いています。ここでは一例を挙げます。
図表1は、OECD加盟諸国38カ国の2023年の「時間当たり労働生産性(就業1時間当たり付加価値)」のランキングです。日本は56.8ドル(5,379円/購買力平価換算)で29位です。
また、就業者1人当たり労働生産性は2023年で92,663ドル(877万円/購買力平価換算)で、ハンガリーやスロバキアといった東欧諸国とほぼ同じ水準で、米国の55%程度です。順位は、1970年以降で最も低く、OECD加盟38カ国中32位です。
時間当たりでも、就業者一人当たりでも、主要先進7カ国で最も低くなっています。
以上は全産業を対象にしていますが、日本企業が長年競争優位を維持してきた製造業に限っても、労働生産性(就業者一人当たり付加価値)は80,678ドル(2022年)で、OECD加盟主要34カ国中19位です。日本の順位は、2000年にOECD諸国でトップだったものの、その後低下し続けており、2010年に10位、2015年以降は17~19位で推移しています。
円安の影響はありますが、国際比較で低下しているという趨勢は間違いありません。