つまり、「中国産」を用いているのは、なにも亀田製菓だけではないのである。これは当然だ。米菓メーカーだけではなく、日本の食品メーカーは、食料自給率38%という異常な国の中で「安くて高品質」を求める消費者のため、原料調達などで血の滲むような努力をしている。だから、「反日」などイデオロギーは一切関係なく安い中国産に依存をしてしまう。「中国産を使ってはならぬ」となったら、日本の安くてうまい外食・食品メーカーは成り立たない。
そういうシビアな現実をわかっている人たちは、「中国産を用いている亀田製菓を許すな」という一部の人の怒りを、もの珍しく感じる。拡散や野次馬的に応援はするが、自分もこの運動に参加しようという人は少ない。だから、「亀田製菓不買運動」は限定的だった。
誤解なきように言っておくが、「ネット発の不買運動など脅威ではない」などと軽視しているわけではない。不買運動は消費者の意志を社会や企業に伝える大切なアクションで、この世の中を変える力がある。ただ、その主張や根拠となる情報が過度に偏っている場合、「エア炎上」どまりで、本当に大きなムーブメントにまで発展しないと言いたいのだ。
これは本当に「炎上」なのか。それともノイジーマイノリティによる「エア炎上」なのか。企業危機管理に携わる方は、注意深く見極めていただきたい。
(ノンフィクションライター 窪田順生)