だが、それは杞憂だ。基本的に「エア炎上」によるネットの不買運動は現実にそこまで大きな損害を出さない。下手に動いて刺激を与えて、世間の注目度を上げないためにも「無視」がベストなのだ。
「赤いきつね」と同じエア炎上…
「亀田製菓不買運動」が失敗したワケ
それがよくわかるのが昨年末にあった、亀田製菓の不買運動だ。
実は、あれも「炎上」と認識されていたが、実態としては2段階あった。前半は「炎上」で後半は「エア炎上」という2つが混在したケースだったのだ。忘れている方もいらっしゃると思うので、順を追って説明しよう。
発端は、亀田製菓の会長CEOを務めている、インド出身のジュネジャ・レカ・ラジュ氏が、海外メディアのインタビューで「日本はさらなる移民受け入れを」と発言をしたとして批判を浴びて、株価が大きく下落したことだ。
当たり前の話だが、株の取引はネットで行われる。信頼性の高い報道機関がネットで「移民推進発言」を報じれば、リスクを嫌う個人投資家は不安材料を見て、一気に売りに走るというのは、容易に想像できよう。
ただ、《「日本に移民を」亀田製菓CEOの発言が炎上して株価は下落…不買運動に加担する“ピュアな人”に背筋が凍るワケ》で詳しく解説したように、これはフランスのAFP通信という「移民問題に関心が高い海外メディア」による「意訳」が引き起こしたもので、実際にラジャ氏は「海外から人材を受け入れることが重要」としか言っていない。
とは言え、ネットやSNSで「亀田製菓はインドを拠点にしろ!」などの批判が殺到し、株価下落という実害が出たのは事実なので、この現象は紛れもなく「炎上」と言える。
ただ、ここからややこしいことに「エア炎上」の動きも始まるのだ。ネットやSNSで一部の人たちが、亀田製菓の「梅の香巻」が中国製造で、中国産のもち米を用いているという情報を拡散して、「亀田製菓不買」を呼びかける。国産原料を用いている競合の三幸製菓や岩塚製菓などを買って応援しようと主張も注目を集めた。
このような投稿が大バズりして、SNSでは不買運動が大盛り上がりした。中には、亀田製菓の柿の種が売れなくなって大量に積み上げられていた、という写真などの投稿もあって、「不買運動が効いてるぞ」「倒産も時間の問題だ、ざまあ」などと勝利宣言をする人もいた。
そこにダメ押しとなったのが、今年2月、台湾で亀田製菓の乳児向け米菓「野菜ハイハイン」から残留基準値を超えるカドミウムが検出され、廃棄・積み戻し処分になったことを報じられたことだ。これで「中国産原料」がまた蒸し返され、再び不買が呼びかけられる。