アメリカにもマグニフィセントセブンの一段階下のランクの大企業があります。P&G、ジョンソンアンドジョンソン、エクソンモービル、モルガンスタンレーといった企業を思い浮かべてください。それらの会社の時価総額はだいたい5000億ドル程度(約75兆円)ですが、これは「日本市場で凄い会社」の5倍程度、つまりアメリカ経済の大きさで「凄い会社」の規模だということです。
要するに15兆円という規模は日本というお山の大将の到達点で、その15兆円の壁を超えていくと初めてトヨタやソニーの目に映る情景が経営者に見えるようになってくるのです。その尺度で見ると、今回、日立が20兆円を超えるグループに入ったことが大きなニュースだと捉えることができます。
ではあらためてその視点でとらえ直すと、なぜ日立製作所は20兆円クラブに入会できたのでしょうか。なぜ日立の時価総額はわずか1年で10兆円から20兆円へと倍増したのでしょうか。ここを考えてみたいと思います。
日立の業績と株価を過去15年間で振り返ると2010年代はゆるやかに株価の傾向としては右肩上がりとはいえ、基本的には300円〜900円の間をいったりきたりするボックス相場でした。この時期は長年のライバルだった東芝が凋落していく時期で、電機業界の苦境の中での選択と集中が模索されてきた時期でした。
日立製作所の株価が明確に上昇に転じたのは2020年代に入ってからです。事業が3つのセクターに集約され、それぞれが力強く利益を稼ぎだす構造が鮮明になり、それを好感して日立の株価は1200円~1400円の水準に定着していきました。
これがちょうど2年前、2023年2月ぐらいまでの株式市場における日立製作所に対する評価でした。当時の1400円の株価からすれば日立の時価総額はまだ6兆円を超えた水準だったわけです。
参考までに日立の3つのセクターとは、ITソリューションを担うデジタルシステム&サービス、発電と鉄道がひとつになったグリーンエナジー&モビリティ、そしていわゆる重電機器に相当する事業が集まったコネクティブインダストリーズです。それぞれが年間3兆円前後の売上高をたたき出し、安定的な成長を見せています。