クリエイティブの検証サイクルを高速で回す
――戦略とクリエイティブを一気通貫でサポートするということですが、具体的にはどのようなプロセスで進めるのでしょうか。
プロセスに標準的なものはありません。よく言えば「テーラーメード」ですが、「混沌」と言った方が近いかもしれません(笑)。傾向としては、戦略とクリエイティブが混然一体となって一気に立ち上がるケースが増えていて、それが私たちのような二つが一体化したチームが求められる背景かもしれません。

――それがD.Designのグループインで可能になったと。
はい。提案の最初期からクリエイティブのメンバーとワンチームで動くので、先に具体的な「絵」を見せられるのは大きな強みです。戦略プロセスがギュッと圧縮されてクリエイティブワークの中に組み込まれるので、クリエイティブが形になった瞬間に戦略プロセスの設計も終わっていた、ということが少なくありません。
「戦略に基づいて仮説を立てましょう」ではなく、「仮説を作ってきたので、すぐ検証しましょう」というスタイルなので話が早い。事業戦略とクリエイティブを同時並行でビルド&スクラップしながら効果を検証し、結果のフィードバックを得てさらにアップデートしていく――というサイクルを高速で回していきます。
――デザイン思考とアジャイル開発を組み合わせたようなアプローチですね。
私たちのチームの特色は、デジタルプロダクトだけでなく、フィジカルな製品開発やツール設計、店舗デザインなども得意としていることです。検証に手間がかかるものほど、戦略とクリエイティブのワンチームで取り組むことのメリットが大きい。戦略は実行してみないと分からないし、実行した結果を検証して初めて知見になります。ここが分断していると、成果を得るまでに時間もかかりますし、そもそも十分な成果が得られません。
――しかし、クリエイティブがもたらす情緒的な価値や効果を検証するのは難しくありませんか。
戦略とクリエイティブを一気通貫させることのもう一つのメリットが、曖昧になりがちなクリエイティブの目的が明確になることです。そして、目的さえはっきりしていれば、検証はそれほど難しくありません。
デロイトはコンサルティングファームとして効果測定や分析は得意ですし、データサイエンティストやアナリストといった人材もそろっています。そして、対象がマーケティング施策であれ、情緒的なクリエイティブであれ、「それによってもたらされたビジネスインパクトを明らかにする」という基本的な考え方は同じです。
――どのような指標でクリエイティブの質を測るのでしょうか。
クリエイティブの役割は「パーセプションチェンジ」です。つまり、「人の心を動かし、認識や行動を変えること」でビジネスにインパクトを与えなくてはならない。ですから基本的には「認知や行動を変えた人の数」がKPI(重要業績評価指標)になります。
例えば、私たちは疾患啓発の広告キャンペーンを手掛けることもありますが、この場合のクリエイティブのゴールは「患者を救うこと」であり、KPIは受診者数や治療率です。この指標が振るわなければ、どんなに美しいビジュアルでもクリエイティブとしては失敗です。