ハウスは、全寮制の中で友情を育てるところでもあります。

 両親を亡くし、伯父のバーノンと伯母のペチュニア、その息子のダドリーに虐待ともいえる扱いを受けていたハリー・ポッターはそれまで孤独でしたが、ホグワーツに入学したことで、ロン・ウィーズリーやハーマイオニー・グレンジャーと出会いましたね。

『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』でも、ハリーとヴォルデモートとの究極の違いが、ハリーが両親から受けた「愛情」と、ロン、ハーマイオニー、ネビル、ジニー、ルーナといったホグワーツで育てた「友情」であることにハリー自らが気づくのです。

 こうした強固な友情を育むのも、ハウスが舞台となるのです。

ステータスの象徴
「ハイ・テーブル」とは?

 さらに、全寮制のハウスは、生徒にとって家でもあります。

『ハリー・ポッターと賢者の石』の最後の場面、ホグワーツ特急で学校をあとにする時、「家に帰るって変な感じね」と言うハーマイオニーに対して、ハリーはハグリッドを見ながら、「I am not going(僕は家に帰るんじゃない)」と断言するシーンからもそれは見て取れます。つまり、ハリーにとっての「家」はハウスであるホグワーツただ1つだったのです。

 余談ですが、映画の中での食事の場、そして『ハリー・ポッターと死の秘宝』の最終決戦の場所にもなった大広間は、オックスフォード大学のカレッジの中でも最大規模のクライスト・チャーチ・カレッジのダイニングホールがモデルとなっています。

 映画で教授たちのテーブルがどんなだったか覚えていますか?生徒たちより一段高い位置にありましたね。これは「ハイ・テーブル」といって、現実では教授レベル以上の人間とお招きされた客しかあの席で食事できないことになっています(図表1-6)。ステータスの高い人しか座れない特権的な場所でもあるのです。

「ハリー・ポッター」のホグワーツより厳しい?イギリス名門校のリアルな寮生活とは同書より転載