全寮制の持つ意味と
メリットとは?

 話を戻しましょう。

 全寮制の意味は、やはりハウスの連帯感、生徒同士の結束、教職員と生徒の結束、教職員同士の結束、といった強いつながりの人間関係が生み出されることでしょう。全寮制であることで人間関係は密になり、またハウスマスターやテューター、寮母たちとも家族ぐるみで生徒たちと交流することになります。

 しかし、その人間関係を友好的に保つためには、礼儀・マナーや利他主義が不可欠です。周りの人を大切にすることが、回り回って自分が大切にされることになるのです。

 寮生活は他人との共同生活です。共同生活の中で、気の合う人や合わない人、信用できる人できない人、を見分けながらも、そういった人たちとうまく生活をしていく術が必要になっていきます。その際、礼儀や誠実さや公平な態度が実りあるコミュニティを作っていくことを知るのです。

 例えば、「ハリー・ポッター」シリーズのハリーとロンは、すました態度や授業への積極的な姿勢、その上お節介なハーマイオニーとは、もともとそりが合わなかったのですが、ハロウィンの日にトロールに殺されそうになった彼女を2人が命がけで救うことになります。そして、この日を境にハリーとロンとハーマイオニーは、学友というだけではなく、ともに悪と闘う戦友として、強い友情で結ばれてゆくのです。

固い絆で結ばれる
ハウスの仲間

 パブリック・スクールにおいても、ハウスの仲間は固い絆で結ばれてゆきます。固い絆は、楽しいことの共有だけでは生まれません。友情は、ハウス対抗の行事でともに闘いながらも負けた悔しさや、学ぶ辛さの中での助け合いや、罰を受けたあとの励まし、といった苦しみや喜びを一緒にくぐり抜けてきたあとに生まれるものなのです。この友情はSNSやネット越しには育てられないものといえましょう。『トム・ブラウンの学校生活』(1940年版映画)でもそれは見て取れます。