外部環境の面でも、富士通は営業活動を根本的に見直さなければならないタイミングを迎えていました。富士通を含め、日本企業の営業はヒトに頼るところが大きく、営業担当者がお客様のもとへ足しげく通い、信頼関係を構築して商品やサービスを売る、労働集約型のモデルが主流となってきました。
日本企業が活路を見いだすには
デジタルセールスしかない
しかし、外資系企業をはじめとする競合他社と戦っていくためには、デジタルツールやデータ活用などによって営業活動を効率化しなければなりません。特に昨今のような人手不足が深刻化する中では、ヒトに頼り切る営業はサステナブルとは言えません。
売り物についても、顧客との関係性によるモノ売りの有効性は理解しつつも、顧客のニーズを的確に捉えたソリューション提供によって困り事を解決する、コト売りの事業モデルに力を入れていく必要があります。
このような背景から、社内の営業活動を変革していくことを目的として、2020年9月にデジタルセールスの立ち上げ準備を始めました。これは、トップダウンではなくボトムアップでスタートしたプロジェクトです。
当時の私は富士通に転職したばかりで、前職での経験を生かした営業活動の改革に寄与できることがないかと考えていました。日本企業のマーケティング部門はバックオフィスとして機能することが多く、「金の匂い」がしないと感じていました。そこで私が得意とするマネタイズの仕組み改革として、マーケティング内にデジタルセールスを設置しようと考えたのです。
デジタルセールスは、データを十分に活用する売り方を確立し、富士通グループの営業部門のDX推進に貢献する組織です。組織としての使命はBtoB領域における新規顧客の開拓を目指し、その方法として電話やメールなどを活用する非対面型の営業(インサイドセールス)を行います。BtoC主体の企業であっても、業務フローでは最終消費者との間に事業者が入っている、つまりBtoBtoCのケースもあり、これから解説する営業改革を役立てることができます。
インサイドセールスと言えば、一般的にマーケティングが行うようなイベントやキャンペーンによってリード(編集部注/企業の製品やサービスに興味を示す見込み客)を獲得し、フォローコール(電話)から顧客情報やニーズをヒアリング、商品を販売する業務がイメージされやすいかもしれません。これは、インサイドセールスの中でSDR(Sales Development Representative)と呼ばれる業務です。