一方、インサイドセールスには、マーケティングから引き継ぐリードの開拓と精査のみならず、外勤型営業であるフィールドセールスが狙いたい企業や、経営方針として開拓したい業界などにアプローチする業務もあります。これはBDR(Business Development Representative)と呼ばれます。

 つまり、顧客と非対面で営業するという点で一括りにされやすいインサイドセールスには、セミナーの参加者など、自社と接点を持った顧客にアプローチするインバウンド型の営業と、これまで自社と接点がなく、こちらに目を向けていない新規顧客を対象として、新たな取引の創出を狙いたい企業にアプローチする、アウトバウンド型の営業があるということです。

 私たちデジタルセールスはSDRやカスタマーサクセスの機能も含みつつ、営業方法の変革という点ではBDRの機能を果たします。複数ある社内の営業部門や商品部門と連携しながら、彼らが狙いたい顧客、具体的には受注金額が大きく、クロスセルやアップセルが狙える顧客を対象として、ニーズを聞き出し、フィールドセールスがアプローチするための決裁権者やキーパーソンを自らの手で探し出す役割を持ちます。

 新規顧客の開拓を担う理由は、フィールドセールスが既存顧客の対応で忙しいことが多く、時間や人員といったリソース不足に陥りがちであるからです。

営業DXが遅れたため
競争力が伸び悩む日本企業

 そこで、手薄になる業務を私たちが引き受けることによって、フィールドセールスは限られたリソースを使いながら、確度が高い案件にアプローチできるようになります。

 このような違いがあることから、一般的な意味を指す場合は「インサイドセールス」とし、富士通での私たちの取り組みの場合は「デジタルセールス」と表記します。

 しかし、実際には営業DX(編集部注/デジタル技術を活用し、営業活動の効率化や顧客満足度の向上を図る取り組み)が遅れ、競争力も伸び悩んでいるのが現在の日本企業です。まずは「論より証拠」で、3つのデータを見てみましょう。

(1)労働生産性

 労働生産性は、モノやサービスをどれだけ効率的に生み出しているかを測る指標です。「労働生産性の国際比較2023」によると、2022年の日本人の時間あたり労働生産性(1時間で生み出す付加価値)は52.3ドルで、OECD加盟38カ国中で30位でした(図1-1)。

図1-1 労働生産性が低下し続けている その1同書より転載 拡大画像表示

 この順位は、1970年以降で最も低い結果です。