それから何度もアリライの家に遊びにいった。子供たちは「ユースケ、ユースケ」と僕になつき、空手の真似事を一緒にやった。
料理は一度だけカレイのような魚を串にはさんで(串刺しではなく、2本の平串ではさんでいた)炭で焼いたものが出たが、あとは毎回ココナッツミルクで魚を煮たものだった。
料理好きといっても、いろんなレシピを試したいタイプじゃないのかもしれない。そう思ったところで、ふと別の考えが頭をよぎった。島とはいえ、漁師でない限り魚は高価だろう。普段の食事では魚はそうそう調理しないからレパートリーが増えないだけではないか?僕が来るから魚を用意してくれていた……。
実際、彼らはいつも先に食事を済ませていた。
僕は毎回、料理のうまさに合わせて町の食堂より多めの金額をアリライに手渡した。彼は自然な様子で受け取ってくれた。
別れを告げた翌朝
再び子どもたちが来た
村を離れる前夜、末っ子のマヌアルが「行くな行くな!」とだだをこね、僕の足にしがみついた。涙を浮かべたまん丸の顔がかわいくて愛おしくてなんだかたまらない思いがした。

石田ゆうすけ 著
マヌアルを説き伏せ、彼らにサヨナラをした。宿から彼らの家までは自転車でもちょっとかかるので、この夜にお別れをしたのだ。宿に帰ってからベッドに横になり、島での日々を思い返しながら眠りについた。
翌朝、出発の準備をしていると、4人の子供たちが僕の部屋に入ってきたので、「えっ、なんで!?」と声を上げた。
「ここまで歩いてきたの?」
彼らのうしろからアリライが顔を出し、苦笑しながら言った。
「この子らがサヨナラを言いたいんだって」
ああもう!全員を抱きしめたくなったが、子供たちはというと、遠路はるばる歩いてきたにもかかわらず、外では勝手が違うのか、みんな人が変わったようにおとなしくなり、底抜けに無邪気だったマヌアルでさえも恥ずかしそうに下を向いてもじもじしていた。