Adeptは約4億ドルの資金調達に成功し、その製品コンセプトは大きな注目を集めていたが、製品の商用化には至っていなかった。技術開発に多額の資金が必要な一方で、収益化の見通しが立たず、追加の資金調達も難しい状況に陥っていた。アマゾンとのこの取引前には、企業売却を模索しているとも報じられていた。
2021年に設立されたCharacter AIは、個性豊かなAIキャラクターとの対話を可能にするプラットフォームを開発していた。ユーザーは歴史上の人物や架空のキャラクターと会話を楽しむことができ、教育や娯楽分野での活用が期待されていたが、2024年8月にグーグルと以下のような取引を行った。
・Character AIの共同創業者(Noam Shazeer氏とDaniel De Freitas氏)と研究チームの一部をグーグルが雇用
・Character AIの技術を活用し、グーグルの既存のAI開発の取り組みを強化
Character AIは2023年3月に1億5000万ドルの資金調達を行い、10億ドルの評価額を獲得した。ユーザー数は急増していたものの、収益化が見込めるビジネスモデルの確立には至っていなかった。
2023年9月には50億ドル超の評価額での追加資金調達が噂されたが実現せず、競合他社の台頭やAIキャラクターの倫理的な問題も課題として指摘されていた。
規制をすり抜けて人材を獲得
大手テックの新たな武器
以上3つの事例に共通するのは、大手テック企業がスタートアップの核となる人材と技術を獲得しつつ、法的には企業買収を行っていないという点である。この手法により、大手テック企業は規制当局の厳しい審査を回避しつつ、激しさを増しているAI人材の獲得競争で優位に立つことができる。
こうした新たな提携スキームが台頭してきた背景には、米国をはじめとする各国の規制当局が大手テック企業による市場独占を防止するために、企業買収に対する審査を強化していることが挙げられる。たとえば、米国では取引額が1億1950万ドルを超える企業買収については、FTC(連邦取引委員会)が競争政策上の問題がないか調査を行うことになっている。