F:EVに対しては逆風吹きすさぶ感じですが、PHEVに関してどうでしょう?

五:PHEVに逆風は感じません。むしろ順風です。EVの一番のネックはやはり充電インフラです。特に欧州のような長距離を乗る地域で、長いバカンスを取って、大きな荷物を引っ張ってどこかに行くというシーンで、果たして今の環境でEVが通用するのかと。途中で何度も充電して、更に行った先で充電設備がありませんでした、となった瞬間にジ・エンドです。その意味でPHEVはいい具合にバランスが取れていて、クルマ選びの際の有力な選択肢になっているのだと思います。

高PHEVは基本的にバッテリーを使ってEVとして走り、電気が足りなくなったら充電できる。さらに足りなくなったらガソリンを使って走るPHEVは基本的にバッテリーを使ってEVとして走り、電気が足りなくなったらエンジンが発電機を動かし充電できる。さらに足りなくなったらガソリンを使って走る Photo by F.Y.

F:EVも短距離のコミューターとして割り切るなら良いんですけどね。

三菱広報・田中氏:今まさにフェルさんが言ったように、インフラがそこまで整っていない状況であればシティコミューター的な、弊社でいうとeKクロスEV、あるいは商用のミニキャブEVのように、そこまで遠出をしない、航続距離の限られた部分で使えるものについてはEVを推進しているのですが、中型から大型になるとインフラに左右されないPHEVを推していきたいと、そのように考えております。

F:将来的にアウトランダーのフルEVは造らないのですか?

五:いや、それはないですね。少なくとも今現在、社内でそのような話は出ておりません。やっぱりアウトランダーはPHEVですよ。

大型SUVのEVを売るのは難しい

F:輸入車では大型SUVのフル電動が多く出ていますが。どこもICEのSUVほどの勢いはないようですね。

五:SUVのEVはまあまあ難しいですよ。大きく重たい電池を載せてクルマ自体がうんと重たくなってしまう。街中でちょい乗りの時でも、常に重たい荷物を載せている状態にある。その点、PHEVは重さと用途のバランスが取れている。我々は「1日で使い切る分」がベストバランスだと考えています。それがちょうど良いサイズ。

F:EV走行で100キロがベストバランスだと。

五:はい。普段使いは電池でやっていく。たまに遠出したい時には、そこにプラスアルファでエンジンがかかる。それぐらいの電池サイズがちょうど良いと思っています。バッテリーが大きくなりすぎると、常に重い物を引っ張っているだけになってしまうし、小さいとしょっちゅうエンジンがかかってしまう。いまの100キロくらいがちょうど良いのではないかな、と。

F:今のお話だと、普段使いではエンジンがほとんど用無しという事になりませんか。「たまに遠出したい時には」の「たま」のために、普段は必要ない重いエンジンを載せていることになる。それを避けるためには、うんと軽いエンジンを積む必要がある。

五:なるほど、うん。

F:でも今のアウトランダーPHEVのエンジンは、それ用の特別に軽いエンジンではありませんよね。

五:専用の軽いエンジンかと言われると、そうではありません。2.4リッターです。