
10年前、アース製薬で異例のトップ人事が発表された。オーナー家出身ではなく、役員の中でも若手だった川端克宜社長が誕生したのだ。その背景には何があるのか、またどんな思いで経営に向き合ってきたのか。設立100周年を期に出版した『BATON』(ダイヤモンド社)で語られなかった秘話を交えつつ、その素顔と「アース製薬これからの100年」への思いを聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・ライフ編集部 小尾拓也、大根田康介 撮影/鈴木愛子)
なぜ42歳の若さで社長に?
異例抜擢の真相
――大塚製薬のグループでもあるアース製薬で、2014年、営業マンとしてトップをひた走っていた川端克宜氏が社長に就任した。オーナー家出身ではなく、しかも当時42歳と若かったにもかかわらずだ。アース製薬はなぜ世代交代が必要だったのか。川端社長が当時を振り返る。
ちょうど10年前くらいからデジタル化が進み始め、当社の経営スタイルも変わりつつありました。当社はSPA(製造小売業)ではなく、直接販売を行わないビジネスモデルです。
つまり、販売店などの取引先との関係が重要になります。その取引先も世代交代が進んでおり、創業社長から次の世代に引き継がれていく流れがありました。
また、当時社長だった大塚達也現会長(大塚家出身)も、おそらく自身の中で一区切りついて、ちょうど交代を考えていたのでしょう。そうした節目が重なったことが、世代交代の大きな要因だったと思います。
大塚会長からは、「今は何も分からないかもしれないが、時がたてば分かる」と言われました。当時の私は、10年も社長を務めることになるとは思っておらず、その時間軸の長さもよく理解していませんでした。
でも、今振り返ると、確かに会長の言葉の意味が分かる気がします。